最近の賃貸事情-Vol.9 入居者募集と賃貸条件の変化

この時期は成約率が比較的低い為、募集賃料にバラツキがあり、募集条件にも差がでます。具体的には、「礼金ナシ」「仲介手数料サービス」や入居して一定期間賃料を免除するシステム「フリーレント」など、入居時の負担を軽減させることで各社集客力を高めようとしています。

私たちは、長期空室を決めるために「何が一番有効な対策か」ということを常に考えなければなりませんが、賃貸物件には変えることが出来ないものが二つあります。その一つは立地条件(環境)で、もう一つは面積(プランニング)です。反対に変えることが出来るものとして、ある程度費用がかかりますが「時代のニーズに合った間取に変える」「オートロックにする」などがあります。また比較的費用のかからない方法としては、エアコンやウォシュレットなどの設備を取り付けることが考えられます。費用が全くかからず簡単に出来るものに募集条件の緩和があります。このように早期成約を目指すためには「物件に付加価値を付ける」あるいは「募集条件を緩和する」という二者択一になります。普段私たちがオーナーに「物件の競争力を高める提案」をする際、このどちらを選ぶかはとても迷うところです。

募集条件を緩和する場合、3つのことが考えられます。一つは「賃料の値下げ」、もう一つは「礼金ナシかフリーレント」。最後に「ペットや楽器を認める」。最初の二つは金銭的処理という意味では同じですが、賃料という「継続的なもの」か、礼金という「一時的なもの」か、という根本的な違いがあります。貸主側としては一時的な方で対応したいところです。しかし入居者の意識調査において、「一番優先させる賃貸条件」は礼金やフリーレントなどの一時金ではなく「賃料」でした。ですから賃貸条件を緩和する場合とても迷うのです。賃料を下げた場合、下げた賃料が更新後の新賃料のベースになってしまい、また他室の入居者への影響も考えなくてはなりません。ペットや楽器が不可だった物件を可にする場合も、他の入居者のことに配慮しなければなりません。一時金で処理をするということはそういう心配が不要になるわけです。

当社でも物件によって「礼金ナシ」や「フリーレント」などで対応していますが、この傾向は特に郊外に多く、競争に勝つためではなく、市場に出すには「礼金ナシ」が当然になっている地域もあります。

これらはすべてエンドユーザー向けの対策ですが、別の角度からの対策として、貸主又は管理会社が業者に対して成約時に広告宣伝費を払うようにしているケースもあります。これは客付け業者にメリットを与えて類似物件があっても、他より報酬が多い物件を優先的にエンドユーザーに紹介させ、成約に結びつけるのが狙いです。

この時期は部屋を探している方より募集している物件が圧倒的に多いのが現実です。従って空室を減らす為に「室内をきちんとリフォーム」して「共用部分もきれいにしておく」事は当然ですが、これからは「募集条件をニーズにあったもの」にいち早く変えていく必要もあるのではと思われます。