最近の賃貸事情-Vol.12 敷金の精算

今回は注目されている「原状回復(敷金の精算)」についてお話しいたします。

当社では契約時に契約内容を詳しく説明していますが、最近の傾向として、借主が予め契約内容を確認し、不利な条項・条文について削除や訂正の要望を出すことが多くなっています。また契約時、契約内容に納得して署名捺印しても、解約時に「不当なのでは」と覆す人も増えています。ご存知の方も多いと思いますが、その要因のひとつに国土交通省から発行されている「原状回復ガイドライン」の存在があります。これは、平成5年に建設省が住宅宅地審議会の答申を受けて作成した賃貸住宅標準契約書、民法や判例などの考え方を踏まえ、原状回復をめぐるトラブルの未然防止と円滑な解決のため、契約や退去の際に貸主・借主双方が予め理解しておくべき一般的なルール等を示し、平成10年3月に発行されたものです。内容を一部紹介すると、「たばこのヤニ汚れについてはクリーニングで除去できる程度の汚れは通常の損耗の範囲であると考えられる」と明記されています。一般的な契約書では、たばこのヤニ汚れは借主負担、と記載されていることが多いのですが、「ガイドライン」ではクリーニングで除去できる程度…とあいまいな表現になっており、逆にトラブルの原因になる場合があります。また、マスコミが「原状回復の問題」の極端な例だけを取り上げて、大げさに報道しているため、解約時の敷金精算がスムーズに進まずトラブルに発展するケースも増えました。

毀損・破損は別として、汚損に関しては各自判断基準がまちまちで、認識・感覚がそれぞれ異なるところです。契約書に「自然損耗及び磨耗は貸主負担、破損、汚損は借主負担」と明記されていても、何処までが自然損耗で、何処からが汚損になるのか、各自捉え方が異なるため話し合いが難航します。

この「ガイドライン」が平成16年2月に改訂されました。改訂の大きなポイントは、入居時に原状回復確認リストを作成し、当事者が立い会いのもとで部位ごとの現況を確認することの提示と個別具体的な事例が盛込まれた事です。また、新聞やTVなどで報道された「東京ルール(敷金精算についての条例案)」を東京都が検討を始め、議会で承認されれば今年9月頃の施行になるようです。「東京ルール」とは、業者が重要事項説明とは別に「原状回復ガイドライン・契約書で定める原状回復の内容一入居中の修繕は原則的に貸主負担である旨・契約書で定める修繕内容」の説明を義務づける事が予想されています。

「ガイドライン」や「東京ルール」は入居者保護に傾いていると考えられますが、これからはますますこの傾向が強くなると思われ、借主から修繕費を徴収することが困難になるでしょう。現状(借り手市場)の賃貸事情やトラブル・判例等を考えると、この原状を認めるしかないのかもしれません。今後は私たち業者も、オーナーの方もこれらの制度内容を理解していかなければなりません。そして慣習や賃貸条件・契約内容の変化に伴い、お互い協力し合い、新しい角度で賃貸経営の成功を考えていくことが必要になります。