最近の賃貸事情-Vol.13 敷金の精算(その2)

今回も前回に引続き「敷金の精算(原状回復)」についてお話したいと思います。
テレビや新聞、雑誌といったマスメディアで原状回復・敷金精算の問題が数多く取り上げられるようになり、平成12年頃から全国の消費生活センター等に寄せられる敷金精算をめぐる相談件数(参考1)は増加しました。

トラブルの主な原因は「通常使用」と「経年変化」の解釈の相違です。ガイドラインには「通常使用」と「経年変化」の考え方(参考2)が記載されており、具体例として、「ジュータン等にシミを放置し、手入れ不足でできたシミやカビは借主負担」と、解釈に疑義が生じるように書かれており、ガイドラインに沿った場合、解約精算が余計混乱することもあります。

トラブルは主に以下に挙げる借主のケースで発生します。
1.契約時、契約内容を理解せずに署名捺印してしまう
2.契約内容に納得して署名・捺印しても解約時に覆す
3、ガイドラインが全て正しいと考えている
4.間違ったことを入れ知恵される。また、オーナーの原状回復に対する認識と対応の違いもトラブルの原因になる場合があります。長期間居住してできた汚損等をすべて借主にむけるオーナー、長期間居住したので内装費は自分が持つという考えのオーナー、まちまちです。

賃貸借契約そのものが約束であり、法律ではないこと、地域による慣習の違い、契約と裁判とのギャップ、これらもまた敷金精算問題を複雑化しています。平成10年10月からスタートした「少額訴訟制度」に伴い、原状回復条項に異議を唱え、実際に法的手段に訴える借主も増えています。また、平成13年4月に施行された消費者契約法では「借主に一方的に不利と考えられる契約内容は無効」という規定になっています。

契約内容をどうするか、どのような特約が必要か、見直しが必要な時期です。わたしたちは、個々の契約のみならず、経済、業界、賃貸事情、慣習、民事、法律、裁判、これらの情勢を見ながら、賃貸経営を成功させる賃貸管理を展開していくことが必要になります。