最近の賃貸事情-Vol.23 コンセプトマンション
今回は共同住宅に関する最近の傾向についてお話したいと思います。
地域にマッチしたプランニングが重要ということは随分前から言われていましたが、貸手市場の時代は部屋を造るだけで比較的簡単に入居者が集まりました。しかし入居者ニーズが多種多様になり、供給が増え競争が激しくなるにつれて、それが通用しなくなり、ターゲットを絞った計画の必要性が重要視されています。
これからの賃貸マンションの入居者は、部屋に合わせて住むのではなく、自分の仕事や趣味、ライフスタイルに合わせて部屋を選ぶ時代になるでしょう。また、賃貸派が増えているという現実は、自己所有の戸建てにしか付いていない設備や仕様を賃貸マンションにも求めるようになり、別の視点から見た場合、「癒し」を期待する方も多くなるやもしれません。
現在、デザイナーズマンションやホテル並みのサービスを設けている大型マンション、プールやスポーツジムが入ったマンションが数多くあります。また、対照的にウィークリーマンションやマンスリーマンション、最近ではゲストハウス(賃貸アパートとホテルのそれぞれ良いところを組み合わせた新しいタイプの宿泊施設)という下宿スタイルマンションも登場しています。他にはドミトリー、ルームシェア(フラットシェア、ハウスシェアなどとも言う)などもありますが、これらは滞在期間など、その人の状況に合わせて借りられるメリットがあり、生活費を抑えて自分のやりたいことに全力投球する人に向いています。ラウンジで団欒、パティオでバーベキューなど、敬遠されがちだった入居者同士のコミュニケーションが復活する時が訪れるかもしれません。
従来の賃貸マンションは個人のオーナーが経営していることが多いため、分譲マンションに比べ小規模でした。ところが最近、不動産ファンドの影響もあり法人オーナーが増え、都心部周辺では数百戸もあるような分譲マンション並みの賃貸マンションも増えています。比較的世帯数の少ない低層マンションに住むのか、或いは大規模な高層マンションに住むのかは意見が分かれるところです。それぞれのメリットとデメリットが相反するため、最終的には住む人が「何を重要視するか」で決めるということになります。数年後にはどちらに軍配が上がるでしょうか。
このように価値観と生活スタイルが多様化している今日、建物の大小を問わず、これからの共同住宅(賃貸マンション)のプランニングにおいて重要なことは、単にユーザーのニーズを反映させるだけでなく、貸主側がユーザーをリードしていくような考え方が必要になるかと思われます。