最近の賃貸事情-Vol.27 賃貸不動産経営管理士

賃貸不動産の管理に比重をおいた資格は数年前から存在していましたが、これは「日本賃貸住宅管理協会」と「全国宅地建物取引業協会連合会」と「全日本不動産協会」の3団体がそれぞれ独自に認定したもので、資格の名称も統一されていませんでした。そこに「日本住宅建設産業協会」が加わり、昨年7月に4団体で構成される賃貸不動産経営管理士協議会が発足され、管理士資格の統一がなされました。この流れは管理業務主任者やマンション管理士と同様に、「賃貸不動産経営管理士」もいずれは国家資格になるものと考えられています。

不動産業者に対する宅地建物取引業法は、その名の通り不動産の取引に主体がおかれ、取引完了後の賃貸管理には間接的に影響を与えるだけでした。しかし実際の業務では民法や借地借家法、建築基準法、消防法、消費者契約法などさまざまな規制があり、相当な知識と経験が求められています。

賃貸不動産の管理業務が持つ公共性と社会的意義の重要性は年々高まり、トラブル未然防止の観点から所有者や入居者に対して、中立的な立場で透明性の高い情報を伝え、指導・助言・提案ができる専門家の存在というものが求められてきています。具体的には、所有者に対しては収益の最大化や資産価値を高める提案、入居者に対しては安心・安全な住環境とトラブルの予防・解決に向けたアドバイスを適宜提供することです。そういう知識・技術・能力・倫理観を持った賃貸管理のプロフェッショナルを育成することを目的として、今回の資格制度が創設されたことにより従事者の資質が向上すると思われます。

元々賃貸管理については貸主自ら借主への対応をしていましたが、法律や慣習、権利関係や契約関係が複雑になり、さまざまな形で発生するトラブルに対応できなくなりました。加えて、ガイドラインや東京ルールの曖昧さと賃貸借契約書との関係、付帯設備の高度化に伴うクレームの多様化や複雑化、外国人入居者の増加、自分勝手な入居者の増加、24時間の緊急対応のニーズ、その他不動産証券化の影響や貸主の高齢化により賃貸経営の煩わしい業務を専門家に任せる傾向が強まり十数年前に賃貸管理業がスタートしました。アンケート資料(図1参照)によると、現在の管理委託比率は70%以上にのぼっています。

管理委託内容は「募集」「契約」「退去」と「滞納処理業務」が全体の約6割ですが、その他コンサルティング業務や長期的な事業収支計画や修繕・建替計画の委託率も年々高まっています。

貸主の収益を最大限に維持するためには、借主に快適・安全に長期間住み続けていただき高い入居率を確保することが課題です。私たち管理会社は資産運用のプロとして、また生命と財産を扱う観点から高い倫理と使命感を持って業務に望む必要があります。

システム管理部 荒原