最近の賃貸事情-Vol.30 リフォーム工事のDIY

今回は賃貸経営をする上で必ず発生する入居者入替時のリフォーム工事についてお話します。ガイドラインや東京ルールによって工事代は貸主側の負担を余儀なくされ、加えて工事代も上昇傾向、これらはダイレクトに利回りに影響します。そのような中、個人オーナーを中心に工事代の節約を目的としたDIYが一部で注目されています。

元々DIYとは「Do It Yourself」の略で、直訳は「自分自身で作ろう」、概念は「住まいと暮らしをよりよいものにするために、自らの手で快適な生活空間を創造すること」で、この考え方はイギリスで始まりました。イギリスでは築100年という建物があちこちに並び、新築物件は市場にあまり多くはありません。そのため若者達は古い物件を購入して自分流にアレンジします。 このアレンジがDIYと言われるもので、アメリカや日本へと広まっていきました。現在、日本でもあちこちにホームセンターがあり、壁紙、床材、ペンキ、また日曜道具はもちろん、プロが使用する道具まで何でも揃います。

入替工事の方法は概ね4パターンに分かれ、それぞれにメリットとデメリットがあります(下表)。
リフォーム工事は新築より手間を要し、仕上がりに差が出やすいものです。完了後だけを見ても工事の良し悪しは判らないところもあります。下地処理、クロスの張り方、排水関係や設備関係など隠れている箇所の工事も重要です。

「価格優先」「工事の質を優先」「煩わしさナシを優先」など、何を優先するかによって選ぶ方法が決まります。安くて、工事がよくて、面倒がない、すべてを望みたいところですが、なかなか現実はそうはいかないようです。

新築時もさることながらリフォーム工事も同様で、価格だけでなく工事の質と内容、商品性、効率性、耐久性、人気の設備、入居者のニーズなど、さまざまな要素を充分に考慮し決定することが最良の方法だと思います。

入替工事 施工者ごとのメリット・デメリット

1.管理会社に依頼
管理会社社員が必要工事箇所の提案をし、自社または提携の工事会社が施工します。効率や合理性を考え必要最小限、かつ募集に有効な工事内容を提案します。入替工事はただ単に原状回復するだけでなく、仕様や付帯設備も含め、常に競争力のある物件を目指し提案しなければならなりません。このケースは前入居者との精算や新入居者の入居時期に対してもフレキシブルに対応できます。

2.オーナーが直接工事会社に一式で依頼
退出後の室内を確認し、工事箇所を決め、価格や工事内容を調整後、オーナーが直接工事会社に発注します。1番目に比べ変更や追加工事がある場合など、打合せ、交渉、工事進行に時間を要することがあります。

3.オーナーがクロスの貼替え、清掃、設備工事など、工事内容ごとに個別に直接業者に発注
退出後の室内を確認し、工事箇所を決め、価格や工事内容を調整後、オーナーが直接各工事会社に発注します。工事には順序が必要なため、段取りを充分考えて手配しなければなりません。各業者が入替工事に精通しているかどうかも重要です。各業者から完了報告の後、リフォーム全体の最終確認もオーナーがしなければならず、工事に関するさまざまな知識がオーナーに求められます。

4.オーナーご自身で行う工事、いわゆるDIY
メリットはやはりコスト面。一番低く抑えられますが、その分オーナー自身の手間がかかります。賃貸経営に専従の方、手先が器用でDIYが好きな方には適しているかもしれません。手間隙以外のデメリットとしては、工事業者と疎遠になり、プロにしかできない工事が発生したときに受けてくれる会社がなくなる不安があります。また新商品や流行などの情報が入らず、人気のない部屋になり、空室が長期化してしまうケースも考えられます。