最近の賃貸事情-Vol.33 賃貸条件と相場

賃貸相場の動向についてお話します。今年に入り不況の煽りから引越しされる方が少なく、客付業務に苦戦を強いられる結果となっているため、募集条件を緩和している物件を多く見かけます。

今年3月度の首都圏募集データを見てみると、首都圏全体(マンション)の平均敷金は1.48ヶ月分で昨年の1.56ヶ月分から4.9%減少しました。礼金は平均0.89ヶ月分でこれも昨年の0.97ヶ月分から8.2%下落。賃料も東京都全体で昨年比マイナス3.8%となっています。都心部(マンション)の礼金は昨年の1.34ヶ月分から0.99ヶ月分まで減少。首都圏全体より都心部の下落幅が大きいことから、人気の高かった都心エリアから賃料が低いエリアに人が流れていることが伺えます。条件下落の原因は需要と供給の関係に依るところが大きいのですが、個々の取引を見てみると、貸主側からの緩和と借主側からの交渉との二通りがあります。どちらかと言うと、借主側からの交渉の方が多いようです。

4月度のデータを見てもこの傾向は続いており、都心エリア(マンション)の礼金は0.94ヶ月分と3月度よりさらに下がっています。敷金は礼金ほどではないものの昨年に比べ6.2%減少しています。これは募集条件での結果ですので、成約条件ではさらに低い数値が予想できます。当社の募集状況は上記に述べたほどの下落はありませんが、5月から8月はいわゆる引越オフシーズンですので、当社においても2割程度空室が増える傾向があります。

景気がやや落ち着きを見せたようですが、今後はファミリータイプの空き室が増えて競争が激しくなると予想しています。

賃料や一時金(敷金、礼金)を下げる、或いは「諸条件交渉可能」と表示し募集する場合にも注意が必要です。募集条件を下げることで入居申込者の内容が変わり、家賃滞納のリスクが高くなることがあるためです。入居者審査にはさらに慎重さが求められます。また、他の部屋との契約賃料に差が出てしまうことから、更新時に改定を申し出てくる借主に対してのデリケートな対応も要求されます。

過去に家賃滞納がなかった人でも解雇や派遣切り、或いは減給による滞納も増えています。このような状況がしばらく続くかと思われます。的確な募集条件の提示と入居者の選別、状況により保証会社を利用するなど、私たちはオーナー様にしっかり提案していかなければなりません。

今では賃貸に関する相場情報は借り手側も簡単に入手できます。「相場が下がっている。家賃を下げてくれ」と、相場情報を自分本位に解釈し値下げ交渉をしてくる方が増えていくことが予想できます。長期的な賃貸経営、時には空室期間を予想して、条件を下げて契約または更新することも必要です。しかし私たちは、「同じ部屋は二つとない」という不動産の特性と物件個々の特徴を把握し、また、たくさんのデータや情報を提示し且つ説明し、できるだけ好条件で賃貸できるよう努力して参りたいと思います。