最近の賃貸事情-Vol40 地震保険について

通常の火災保険では「地震による損壊」や「地震を原因とする火災」、「津波などの水害」や「がけ崩れなどの埋没時」に保険金は支払われません。地震火災費用保険金に加入していれば半焼以上の場合のみ火災保険契約金の5%または300万円のいずれか低い金額が支払われます。地震が原因の火災が火災保険の補償対象外となることは理解しづらく、また原因究明が難解なケースもあったようで、阪神淡路大震災では訴訟に発展した例がいくつかありました。最初の揺れから半日後に発生した火災の場合、地震保険に加入していなかったために保険金の支払いを断られて裁判をしましたが、結果は被災者側の敗訴となった事案もあります。

地震保険は単独加入ができません。地震保険に加入するためには必ず火災保険に入る必要があります。地震の発生はとても不確実であり、大地震の場合には莫大な被害が発生するため通常保険としては成立しにくいものです。そのため国と民間とが共同で運営する形をとっています。地震保険は各保険会社が独自に扱っていますが、どこの保険会社で加入しても原則、保険料や補償内容は一律です。国と各保険会社が協力してリスク分担する制度になっているのです。

補償内容は建物、家財ごとに火災保険金額の30%から50%に相当する金額で、建物は5,000万円、家財は1,000万円の限度額が定められています。査定は時価で計算され、1億円以上の建物でも最大5,000万円までしか地震保険を契約することはできません。また、自動車や高級品(貴金属・書画・骨董などで1個または一組が30万円以上のもの)は対象外となります。実際に支払われる金額は3区分(別表)に分かれ、全損の場合は保険金の全額、半損の場合は50%、一部損の場合は5%になり、支払われる保険金額に大きな違いが生じることに注意が必要です。

そもそも地震保険は被災者の生活の安定に寄与することを目的として発足され、民間保険会社が負う地震保険責任を政府が再保険していますので、大地震が発生し保険会社の経営が破綻した場合でも補償されます。但し、国としても無限に責任を負うことはできないため、1回の地震による支払保険金総額が5兆5,000億円を超える場合、契約ごとに支払われる保険金は削減されることがあると規定されています。この金額は関東大震災規模の巨大地震が発生しても保険金の支払いに支障のないように決定されているとのことです。また火災保険と地震保険、2つの保険金を同時に受け取ることはできません。

保険料は建物の構造と所在地により決定されます。地震の発生状況や頻度、活断層などから地震の危険度を算出し、また地震保険料率は過去500年間に発生した375の地震データを活用し算出されています。

免責事項としては地震発生から10日以上経過後に生じた損害、故意または重過失、法令違反による損害、地震の際の紛失や盗難の場合などです。また大規模地震対策特別措置法(現在は東海地震のみ対象)に基づく警戒宣言が発令されたときは、地震防災対策強化地域内に所在する建物または家財については地震保険の新規契約ができなくなります。

地震はいつ起きるか、どのような被害に拡大するかわかりません。もしもの時のために、地震保険付火災保険に加入することをお勧めします。