最近の賃貸事情-Vol48 東京タワーから東京スカイツリーへ

今年5月に地上デジタル放送の送信所が東京タワーから東京スカイツリーに移転する予定です。当初は今年1月に移転の予定でしたが、サンプル調査の結果で約16万世帯にアンテナ調整など相当数の障害発生が予測されたため、急遽延期となっていました。そこで今年に入り連日試験放送を行い受信相談のコールセンターを設け対策に努めていました。

地上デジタル放送化は国策として総務省が勧めてきましたが、今回のスカイツリー移転は民間の計画です。首都圏の高層ビルが増加し今後はもっと高い超高層建造物が建つことが予測されることから、その電波障害の解消を目的に1997年頃から計画がなされていました。

東京スカイツリーに移転することで送信アンテナの高さが約2倍となることで建造物の陰、山、樹木、地形などによる電波障害の範囲が狭くなり、多くの地域で受信状況が改善されると考えられています。また、携帯端末向けのデジタル放送「ワンセグ」を安定受信できるエリアも大幅に拡大すると見込まれています。移転に伴いほとんどの世帯では従来通り良好に受信でき、ごく一部の世帯で受信対策が必要になる場合もあるとの発表でした。しかし実際は、昨年12月から今年3月上旬までに6万9千件以上の問合せがあり、そのうち約2万5千件で受信対策が必要と判断されました。

電波の送信場所が変わることにより、受信する電波のレベルが上昇もしくは低下することが原因でテレビが映らない可能性があります。東京タワーや東京スカイツリーからの距離が近ければアンテナの向きを調整しなければならない場合や、新たに建造物の陰に入ってしまう場合も考えられます。受信アンテナの向きを変えるか受信した信号を増幅するブースターの調整などが必要になります。アンテナで受信していないケーブルテレビや通信系テレビ(光ファイバーなど)は各社で対応しますので受信対策は必要ありません。

移転が原因で映らない場合は放送事業者が適切な対応を行います。戸建てだけでなく住居用の賃貸マンション、アパートなど共同住宅も無償で行ってもらえますが、事業用のテナントビルは原則、費用がかかるとの話ですのでそこは注意が必要です。今回の移転でかかる対策費はおよそ100億円とみられ、NHKと民放5社で負担するそうです。

現在の東京タワーから送信される電波と東京スカイツリーからの電波の両方を受信できるようにすることは可能とのことで、ほとんどの世帯は必要な工事を行っていると思いますが、移転した後にテレビが映らない場合はすぐにコールセンターに問合せ、調整を図る必要があります。

テレビ局は災害時などのため東京タワーの設備はそのまま残し、ラジオ局の一部はコストの面で東京タワーからの発信を続けるところもあるそうです。

テレビに関してはBSなど衛星放送やCATVの誕生、アナログ放送から地上デジタル放送への移行の対応に追われましたが、今回の電波塔の移転で当面は落ち着くと思われます。

※移転は延期される場合があります。