最近の賃貸事情-Vol49 賃貸マンションの防災対策
地震は発生場所と時期、規模と被害がある程度予測されていますが、未だ特定することはできません。地震によって建物が被害を被った場合、火災保険では地震による倒壊や火災の損害は補償されないため地震保険を付帯することが望ましいです。入居者の被害も状況によっては賃貸人や所有者に責任が及ぶこともありますので、耐震基準をクリアする必要もあります。また、きちんとした防災対策は空室対策にも有効です。
現在の耐震基準は1978年に発生した宮城県沖地震の経験を踏まえて1981年に新耐震基準として制定され、震度5強程度の中規模地震に対してほとんど損傷がなく、震度7程度の大規模地震に対しては人命にかかわるような被害が生じないことを目安としています。
旧耐震基準の建物は、現行基準に照らし合わせて耐震性を調べることが可能で、その費用も助成金の対象になる場合もあります。「耐震診断実施済」「耐震補強済」と告知することで募集時の反響が増える効果があります。
別表は東京都が発表した震災後のライフラインへの影響と復旧までの日数です。34.8%が断水し都内全てが復旧するのに約1ヶ月かかる試算です。マンションの場合は本管が復旧しても汲み上げポンプが故障して水が出ないこともあります。高架水槽のひび割れから漏水した二次被害も報告されています。
被害を最小限にするため、バルコニーの避難ハッチや避難経路、パーテーション付近に障害物を置かないようにする。また、消火器や消火栓の状態と使い方を普段から確認しておき、水の供給ルートや非常用発電機の使用方法、停電時のオートロック使用法等も確認しておく必要があります。
エレベーターには安全装置がついており、大きな揺れを感知すると自動で停止するようになっています。しかし全ての停止情報がエレベーター会社に自動的に届くわけではありません。機種や契約内容によっては発見した人が連絡しなければなりません。また、エレベーターの復旧には優先順位があるため業者が来るまでに数日かかることもあります。2009年9月の建築基準法改正により、震災時のエレベーターの安全対策が強化され、戸開走行保護装置の設置義務(ブレーキの二重化、エレベーターを静止する安全回路を別回路にする)、及び予備電源を設けた地震時管制運転装置(かごを最寄りの階に停止させる)が設置義務になりました。
玄関枠が変形して玄関扉が開閉不能になることもあります。災害時は特に一人暮らしの高齢者に対して優先的に声を掛け安否確認も行う必要があります。
最後に災害時の法律問題Q&Aを掲載しましたので参考にしてください。
災害時の法律問題Q&A
Q1:震災により賃貸住宅の入居者が死亡した場合、賃貸人の責任は?
A1:阪神・淡路大震災により賃貸マンションの1階部分が倒壊し賃借人が死亡した事故について、自然損害の割合を斟酌するも5割の限度で賃貸人・所有者の土地工作物責任を認めた判例があります。工作物責任はその工作物に瑕疵があるかが問題となるわけですが、震度5程度の地震に耐えうる安全性を備えることと過去の判例では示されています。
Q2:地震で家具が倒れて床が破損した場合、修繕費用を入居者に請求できるのか?
A2:不可抗力による場合は借主に責任がありませんので修繕費用を請求することはできませんが、借主の家具の設置の仕方に問題があった場合は借主に修繕費用を請求することができます。具体的には他の部屋で家具がどの程度倒壊しているかが目安です。