コラム-Vol.25 花火

東の方角にドーンと音がすれば、東へ走り出す。西の方角でドンドーンと鳴れば、足早に西へ向かい、そしてできるだけ近くで見物する。火の粉をかぶれば病気にならない、何かとご利益がある、そういう花火は縁起物とされていた時代がありました。

夏場だけで全国で3,000箇所、プライベート花火や学園祭の花火など、花火大会として正式に指定されていないものを含めると数限りないと思います。花火は…一瞬の儚さ、すぐに消えてしまう尊さ、潔さ…そして夢。花火を見ている人の屈託の無い笑顔を見ていると幸せな気持ちになります。次回花火を見に行かれた時、打ち揚げ中に是非一度、観客席を振り返って見てください。みんなとてもいい顔をしていて、「笑顔に理屈はいらないなぁ」、と実感します。

元来「祭り」には豊年万作とか疫病を追払うといった「願い」や「供養」など、人の心が込められていたりします。夏に祭りが多いのは、たまたまだったのです。「隅田川」が東京でいちばん有名な花火大会だと言われていますが、始まりのきっかけは夏の疫病を追払う願いがあったそうです。隅田川の花火に限らず、「祭り」や「花火」は当初の目的とは離れて最近では「楽しいイベント」になり、今や花火は夏の風物詩です。

花火は人が創り上げる美しさ、そしてその技術と芸術性を競い合います。花火をこよなく愛したある花火家が「化学反応としての花火と芸術としての花火が存在する」と語りました。一度にたくさん打ち揚げるエキサイティングな演出花火は世界中にたくさんありますが、ひとつひとつを見せる花火は日本が一番!技術は群を抜いています。特に外輪だけでなく、芯がいくつもある真ん丸の花火(八重芯、三重芯など)は日本のみで作られ日本でしか見ることができないものです。また、最近は日本でも数少ない昼花火(煙の色で演出する)も他国では拝めないもののひとつでしょう。

日本の花火大会を大きく分けると、スポンサー花火大会(横浜港神奈川新聞の花火、東京湾の花火 他)、芸術花火競技大会(大曲の花火、土浦の花火 他)、スポンサー及び花火競技会(袋井の花火、諏訪湖の花火、長岡の花火 他)、テーマパーク花火(八景島、ディズニーランド 他)、イベント花火(高校や大学の学園祭、お祭りの花火 他)、伝統的な花火大会(隅田川の花火、三河地方などの手筒花火、片貝の花火、恵比須講 他)、プライベート花火(結婚式、誕生日、会社や団体の花火)です。

最近は桟敷席など、花火大会にも有料席が増えましたが、場所を気にしなければどこの花火もタダで見られます。しかし、普通の花火大会はいざ知らず、有名な花火大会は、映画のようにプロデューサーや監督や演出家がいます。彼らはテーマを持って、観客席の場所、風向き、天候、タイミングを考えドラマチックに打ち揚げています。これからの花火は映画のように「あの監督だから見てみたい」「あの演出家だから見てみたい」と思われるような花火になっていくことでしょう。