コラム-Vol.28 四季
春には春の花が咲きます。私たちは四季があることを当然だと思っています。寒いのが苦手な私は、常夏の国の人たちがうらやましくなります。それは、寝るときに布団がいらない、短パンTシャツで暮らせる、洗濯物が少ない、靴下を履かなくて済むなど、面倒なことがないからです。しかし日本が常夏になることは望みません。やはり私たちは冬があるからこそ春や夏が待ち遠しくなり、暖かい季節を思いきり楽しめると思います。
地球上には一年中裸同然で暮らしている常夏の国の人や、一年中毛皮を着ている極寒の国の人がいます。これらの国にもきっと四季のようなものがあり、それなりに楽しんでいることと思います。私たちにはそれを感じることはできませんが……
初ガツオに春野菜、スイカにカキ氷、くだものに秋野菜、熱燗に鍋料理。最近は食品技術の発達により、季節に関係なくさまざまな野菜や果物を口にすることが出来るようになりましたが、味のないトマトや香りのないきゅうりは目を閉じて口に入れると何を食べているのかわからないことがあります。やはり季節に合ったものを食べたほうが間違いなく美味しい筈です。ファッションも四季折々で、四季がない地域の人たちに比べると4倍楽しんでいるのかも知れません。興味のない人にとっては衣類代の負担が大きくなるでしょうが…。
北海道の人が冬の東京に来ると、家の中の寒さに驚くそうです。また、北欧の人から日本の方が寒いと聞いたことがあります。寒い地域の家の中はずいぶん暖かくしているようです。
東京は寒くなっても滅多に氷点下にはなりませんが、冬場のゲレンデはマイナス10度以下になります。しかし私は東京の方が寒く感じてしまいます。先日、青森出身の知人から教わったのですが、雪を見ると「寒い」ということを最初に視覚で感じ取り、次に肌で感じる。その時体はすでに寒さに順応しているのであまり寒さを感じないとか。東京は雪がないので、直接体で寒さを感じてしまうらしいのです。納得!!でした。動物と同様に人も季節の変わり目を迎えると心も体も次の季節への準備をします。すべての生物は自然に順応しているようです。
一般的に、寒い季節を「苦しみ」や「我慢の時」、暖かい季節を「楽しみ」や「発散の時」と例えています。また、春は新芽が出ることから、物事が好転することを意味します。
5月に入りすべてが鮮やかに映り、いたる所で花が咲き乱れ、鳥たちも元気に飛び回っています。そして私たちの夢も叶いそうな気持ちになります。
朝顔は数時間、桜は一週間の開花。ふたつとも私たちが好きな花です。
儚い(はかない)という字は、「人の夢」と書きます。これが日本人の心の奥底にある美学なのでしょう。また、四季は日本人の感性にも大きな影響を与えているような気がします。