コラム-Vol47 高円寺の粋なCafe

 ある日、友人とすこし遅めのランチをとろうと高円寺駅付近を模索していた。商店街から横道に入るとスパゲティ中心の食欲をそそる手書きのランチメニュー。リーズナブルというか安すぎるその価格に戸惑いを覚えたが、興味が先立ちドアを半分開けて中の様子を覗おうとした時に、「いらっしゃいませ!」という愛嬌のいい女性スタッフの元気な声。後に引けなくなった我々は引き込まれるように店内へ…。ランチタイムのピークは過ぎているのにかなり混んでいた。

若者の多い街にふさわしく気さくで清潔感のある内装と造作。店中央奥のテーブル席に案内され、ペペロンチーニとナスとベーコンのトマトソース、アイスティーとアイスコーヒーを注文。程よい時間で2種類のスパゲティが笑顔と共に運ばれ、小皿2枚もおいてくれた。二皿ともボリュームがあったし、シェアしたかったので小皿はとてもありがたかった。友人は私より大分小柄だが大食い。おそらく私の2倍は食べたであろう。一般的に「痩せの大食い」というが、「小柄な大食い」もあると思った。

昼食時のピークが過ぎていたこともあり、また友人の相談事のためランチにしてはずいぶん長居をしてしまった。そんな時、大抵の店はこれ見よがしに水を注ぎにくるが、それが悪いイメージを抱くことも…。この店もご他聞にもれず店員がやってきた。しかし、私の固定観念が見事に覆させられた。

店員…「ホットコーヒーはいかがですか…」。友人…「おねがいします…」。友人…「すごくうれしいサービスだね」。私…「ほんと、今までこんなこと経験ないよ」。それからまたコーヒーを飲みながらしばらく話していた。だが、「物事には裏がある」と普段から思っている私はまた別なことを考え出した。これは「そろそろお帰りになったらいかがですかのコーヒーかな」。しかし、たとえそうだとしても、とてもおしゃれでスマートな対応である。帰ってほしいという雰囲気などおくびにも出さず笑顔でコーヒーをサービス。これなら客も決して気分を害することなく席を立てる。店のコンセプトなのか、店長の気配りなのか、あるいは店員のアドリブなのかは分からないが、飲食業とサービス業の原点を感じた。

笑顔のスタッフに加えて店のコンセプトとホスピタリティがしっかりしていればサービス業は無敵である。たとえコーヒー一杯だけでもお客は癒しのひと時を求めに来る。

勘定を済ませた後、担当してくれたスタッフが丁寧に頭を下げて「ありがとうございました。また是非お越しください。」この「是非」がとても心に響いた。味もいい、価格も納得、スタッフも誠実、そして何より気分がよかった。

店を後にして「また行きたくなるお店だね」と言うと、「僕もそう思っていたところだよ」と友人。そろって笑顔になっていた。