コラム-Vol48 お箸の国、ニッポン
食事のとり方でその人が兄弟の上か下かが分かるそうです。上の子は周りを気遣いながら、下の子は食べたいように、間の子は普通に食べると言われ、一人っ子の場合は下の子と同様だそうですが、皆様にはこのことが当てはまりますか?
ある日の昼食で、知人が「三角食いができない」と言っていました。初めて聞く言葉でしたが、「三角食い=ごはん→みそ汁→おかずを交互に食べる食べ方」とのこと。彼は小鉢がついていたら最初に全部食べてしまい、その後もおかずを一品ずつ平らげ、最後にみそ汁を一気に飲み干すのだそうで、「みそ汁、冷めちゃうよ」とアドバイスしても、「問題ないです」と返されました。良い方に解釈すれば、会席料理やフランス料理のように一皿ずつ、ひとつひとつ味わって食べるとも取れなくはないですが、私にとってはなんとも違和感がありました。おかずが10種類ぐらいあったら一体どうするのだろう?
話は変わって、日本のものではないスパゲティなどは音を出して食べませんが、日本蕎麦、うどん、ラーメンは音をたてすすって食べたほうが断然美味いと思います。日本茶も音を立てて冷ましながら空気と一緒に飲みますが、紅茶やコーヒーは音を出しては飲みません。日本では、麺類やお茶などをすすることを無作法とはしませんが、西洋では、音をたててスープをすする事はタブー。熱いものを熱いまま口にする習慣がないので音を立てずに飲めるのでしょう。日本ではソーメンや冷たい蕎麦も音を立てて食べる。それは日本には風味を楽しむ文化とうま味を感じる味覚があるからでしょう。外国の人が蕎麦をすすることができずに食べているのを時々見かけますが、決して美味しそうには見えません。日本のものを日本の食べ方で食べているのに、それを批判されるのを余計な事だと思うのは私だけでしょうか。
各国の食事に関するしきたりやマナーには、地域性があるにしても、主客から箸をつける・食べ物が全員に行き渡るように取り分けることなど、共通点も多く、また、足を組んだり、肘をついたり、髪を触ったりする事は、多くの国でマナー違反とされています。姿勢を正して食べることや相手に不愉快な思いをさせないことは国を問わず基本的なエチケット。食事する姿やふるまいが美しいのは、見ていて気持ちがよいものです。食べるということは本能的な行動だけに、マナーはどこの国でも昔から大事にされてきたようです。
「箸に始まり、箸に終わる」と言われている日本人の食事作法。箸を使うことは指先を器用にする。日本人ほど手書きの文字がきれいな国はないと思うし、また、日本人のものづくりの技術が優れていることにも関係しているのかも知れません。
××マナー違反とされ嫌われる代表的な箸の使い方××
●刺し箸…食べ物を突き刺す
●そら箸…いったん箸をつけたのに、食べずに箸をひく
●ねぶり箸…箸を舐める
●迷い箸…何を食べようか迷って、箸をあちこち動かす
●寄せ箸…箸で器を引き寄せる などなど