みなさんこんにちは-Vol.34

大分寒くなりましたが、お元気にお過ごしのこととお察し申し上げます。

昨年秋の金融危機からしばらく経過した今年の夏前、賃貸住宅にも影響が出始めました。不動産に対する景気は良くなるときも悪くなるときも、売買関係に始まり、次に賃貸事業系、そして賃貸住宅系の順番に影響が出ます。

例年どおり今年も春先以降引越しが減りましたが、慢性的な空室も多い状況です。空室が増えた一因として、借りる人が減ったことより供給が増えたことが大きいです。また、人気のある物件とない物件の差が顕著に現れています。オーナーや管理会社は競争に勝つため「契約金の減額」や「フリーレント」を打出し募集活動に奮闘していますが、ハード面(設備や内装等)、或いはソフト面(入居者条件や契約条件)で対応するのかを物件ごとに見極め、競争力を高めることが重要です。

さて、更新料の有効性が問われた裁判が何回かなされております。過去ほとんどが「更新料は有効」との判決でしたが、今年7月の京都地裁、8月の大阪高裁では消費者契約法との関係で無効の判決が下りました。民事の基本は個人の意見を尊重することですが、それ以前の問題として、成人の契約行為には責任を持つことが大原則。自己責任と契約の自由が優先されるべきではないでしょうか。また、極めて稀で偏った意見を持つ人のために長い年月をかけて議論し、歴史や慣習、規則や法律を変えるのはいかがなものかと考えます。貸主側は最高裁に上告するそうですが、この件については本誌2頁の「賃貸事情」で詳しくお話したいと思います。

最近、「敷金鑑定士」という仕事が現れました。賃貸借契約解約時に借主の代理人として、補修費負担を最小限に食い止め、返還金を増やすことが主な業務のようです。借主はもちろん手数料を払います。その手数料と返還金の差額が借主のメリットになるようです。消費者保護的観点というと聞こえがいいですが、景気が悪くなると発生する隙間産業のひとつで、不景気の中で模索した結果の仕事なのでしょう。不当な請求をする貸主や管理会社に対してはともかく、契約書やルールに沿って公平に精算しようとしている場合、敷金鑑定士の存在はかえってトラブルを発生させ結果的に依頼者(消費者)が煩わしい思いをしたり、損をしてしまうことも考えられます。

管理会社が貸主代理であると同様に借主にも代理人が必要な場合があり、事実、大手企業は契約代行会社に依頼するところが増えています。今後は法人に限らず個人契約でも契約代行会社を利用するようになるかもしれません。

何事にも平等な権利義務と公平な機会は必要ですが、同時にそれらがバランスよく保たれることも必要です。生産者と消費者、貸主と借主においても同様です。依頼者の意向に沿って行動し利便を図り、利益をもたらすのが代理人の仕事。しかし代理人は権利を主張するだけでなく相手の立場を理解することも必要であり、それをなくしては、解約精算でさえも和解することなく裁判へと発展してしまうでしょう。このことを念頭におき管理会社として賃貸業界の変遷にしっかり対応してゆきたいと考えております。