最近の賃貸事情-Vol.32 貸家の経営

貸家は持主が住んでいた家を賃貸するケースがほとんどでしたが、ここ数年、最初から賃貸物件として一戸建を建てるケースが増えています。その理由は、普通借家契約では、期間限定特約を設けても実際に解約できるかどうか不安でしたが、定期借家契約ができたことで一定期間安心して賃貸できるようになったこと。また、最近ハウスメーカーも貸家経営を推奨しています。

一戸建は「借りる」というより「買う」という発想があったため貸家の供給は需要に比べ少ない状況でした。一戸建に住むためには購入するしかなかったのです。実際にデータを見てみても、一戸建の供給戸数は全賃貸物件の1~2%程度で、貸家は共同住宅より空室率も低いです。一戸建に限りませんが、価値観の変化と雇用不安により住宅ローンを避けたいと考える賃貸派が増加している事実もあり、買わずに借りる家がより脚光を浴びてきたわけです。

借りる側から見た貸家のメリットは
1.転勤や家族構成、収入に合わせて移ることができる 2.地価が下がっても損失がでないこと 3.騒音問題がない 4.庭がある 5.ペットが飼える 6.ガレージがある なども魅力です。家族が多い場合は同家賃であれば共同住宅より貸家を求める方が多いと思われます。

貸す側から見た貸家のメリットは
1.プランニングや建築が比較的容易 2.狭い敷地や変形敷地でも建築が可能 3.法律・規制や指導要綱も少ない 4.毎月のメンテナンス費用が不要 5.入居者からのクレームやトラブルが少ない 6.財産分与が行いやすく共同住宅に比べ売却も容易 7.最寄駅から多少遠くても需要が期待でき子供の学校の関係で長く住むことも予測できます。さらに、更地や駐車場に居住用建物を建てれば固定資産税や都市計画税、相続税評価額など税金面でもメリットがあります。共同住宅では売却したい時や相続が発生しそうな時など、かなりの時間と労力を要しますが一戸建を定期借家契約で賃貸すれば臨機応変な対応が可能です。

貸家経営のデメリットとしては概ね3つ。
1.面積が大きいため入替時のリフォーム費用が高額 2.樹木の剪定費用がかかる 3.高額家賃のため、空き家になったときのリスク(収入面)が大きいなど。

貸家を建てる際、注意しなければならない点があります。その地域に一戸建の需要があるかどうかが最も大切です。次に、住む家族を想定する(ターゲット)。ファミリーは環境を重視しますので近隣に幼稚園や学校、公園、役所、スーパーマーケットなどの有無もポイント。付帯設備もシングルタイプとは異なります。内外装については、ある程度コンセプトは必要ですが懲りすぎるのは賃貸に向きません。特に外装は地域にマッチしていなければなりません。オーナーの家族や親戚が、将来貸家に住む可能性を予想しておくことも必要です。普通借家契約で貸すか定期借家契約で貸すかは成約に影響します。

賃貸経営を行うには何よりも市場調査や将来の予測が不可欠になります。特に一戸建はリスク分散ができないため、プランニングはリスク分散が出来る共同住宅以上に重要です。地価が高いところでは保有及び投資コストに対して効果(収入)が見合わないケースもありますが、銀行金利や他の投資対象、税金対策まで充分に検討し貸家経営を計画する必要があります。