最近の賃貸事情-Vol38 めやす賃料表示制度について

財団法人日本賃貸住宅管理協会(日管協)が提唱している「めやす賃料」についてお話します。日管協は不動産会社1,167社が加盟する業界最大の団体です。「めやす賃料表示制度」は、礼金や更新料など地域ごとの商慣習の違いを超えて入居希望者が負担する実質的金額を明確化するための仕組みとして創設されました。めやす賃料とは具体的には賃料、共益費、敷引金、礼金、更新料を改定がないものと仮定して4年間賃借した場合の1ヶ月当たりの金額のことです。募集の際にめやす賃料を掲載することにより、消費者が他の物件と容易に比較できるようになります。借主と貸主の賃貸条件に対する理解不足によるトラブル防止のため業界で動き始めています。

貸主側としては、更新料に関する訴訟も気になるところです。大阪の高等裁判所で有効判決と無効判決が出され、最高裁の判決は今年度中にも出ると見られています。今のところ、事例ベースで悪質なケースのみを無効にするというのが有力ですが、更新料すべて無効という可能性も残っています。貸主にとって最も懸念されているのが更新料を遡って利子を付けて借主に返還するという過払い訴訟です。消費者金融の過払い金返還請求ビジネスで暗躍した法律事務所が更新料返還請求に目をつけ、回収した更新料から成功報酬を受取る料金体系を決めて営業を始めた法律事務所も既に現れています。更新料の次は礼金そして共益費、ルームクリーニング代と目標を定めているという話も耳にします。

賃貸物件のオーナーは消費者金融のような大企業ではなく、ほとんどが個人経営です。最近の市況悪化で経営に苦慮しているオーナーも多くいます。もし貸主が賃貸経営に行き詰まり、物件を良質な状態に維持、管理する余力を失えば、市場に出回る賃貸住宅の質が下がり、結果、借主にとっても悪影響が出てしまいます。

更新料はもともと地域の慣習であって、中期的にはすべて家賃に一本化するのが自然であると日管協の会長は話しています。めやす賃料表示はいずれ家賃に一本化されるのを睨んだ制度なのでしょう。通常の募集条件とは別にめやす賃料の項目を設けたポータルサイトも出始めました。一部の地域や管理会社では既に試しているところもありますが、今後は家賃の一本化または一時金の有無を消費者が選択できるような料金設定が広がるのではないかと考えられます。
めやす賃料に含まれない項目は仲介手数料や更新事務手数料、原状回復費用、鍵交換費用、町内会費、定額の設備利用料、保証会社への保証委託料、保険料などがあります。

賃貸借契約は継続的なものです。行政や法律においては将来予測できないこともあり、また、単純に一本化にできないものを今後どう補っていくか課題はありますが、少しずつ制度が動き出していることは確かです。

家賃の値上げが難しいなど借主の権利のみ厚く保護している借地借家法も変えていく必要があると思います。貸主借主がお互いを信頼し、契約の自由を尊重し、契約内容を守り、モラルと常識を持ち合わせ、慣習を大切にし、誠意を持って対応しなければどのような制度をつくってもトラブルは回避されません。

須藤建設は、常に業界動向に注目し、時代を見越して、随時オーナー様へ良い提案をして参りたいと考えております。