最近の賃貸事情-Vol41 震災後の住宅

震災後の地価の動向。今年の1月1日と4月1日の比較(国土交通省調べ)では地価が上昇した地区は全146地区中2区のみで、前回調査16地区の上昇から減少しており、下落地区は前回の77地区から98地区に増加しています。震災の影響で住宅需要が低迷し土地取引が減少したためですが、ゴールデンウィーク以降は需要が高まってきており、まもなく落ち込みは一段落すると見られています。購入者意欲が低下している理由は、津波で家が流され、瓦礫の山となった映像がニュースで放送され、多額のローンを組んで購入するリスクの大きさをあらためて思い知らされたためと言われています。しばらくは賃貸派が増える傾向が続くのではないでしょうか。

次に住まいの安全意識についての業界アンケートの結果です。「安全・安心に住まうことに対して意識が高まった」が9割を占めます。そのトップは「耐震性能などの建物構造」の91%、次に「防災対策(防災設備や簡易トイレ設置など)」で56%でした。1981年6月に耐震基準が法改正されて、それ以前の物件と比べると耐震性能が大きく変化しました。賃貸住宅においても築年数が古い物件の耐震補強や改修工事など耐震対策を考える方が増加しています。また、アパートよりマンション、木造より鉄骨、鉄骨よりRC造、また、1階が広いスペース(店舗や駐車場)になっていない物件などを優先して選ぶ傾向は強くなっています。

その他、高層マンションは揺れが大きい、停電時のエレベーター停止、避難に時間がかかる、断水になれば復旧に時間がかかるなど震災後はやや人気に陰りが見え始めています。埋立地など液状化現象のリスクが高い地域や津波の影響を受けやすい海岸地域の人気も下降しており、徒歩での帰宅が困難な郊外物件も需要が下がり気味です。逆に地盤が安定している西多摩地区の八王子や調布などは住宅の販売戸数が伸びています。

被災したことを想定して家族や親族に近いエリアを選ぶ方もあります。震災後の引越理由で「実家に戻る」「国に帰る」このふたつはとても増えました。しかし現実は仕事の関係で引越しできなかった方も多いようですが…。都心部や職場から自転車か徒歩で帰れる地域の人気も高まりそうです。近隣に避難所となる学校や公民館などがあるか調べる方も増えました。立地に関しては動かせない事実ですが、今後の不動産市場は立地選別がより厳しくなると予想されます。

地震による停電や電力不足の影響を受け、LEDや太陽光発電がかなりの注目を浴びるようになりました。太陽光発電については2002年度の発電量は20万kW弱、2008年度は20万kW強とほとんど変化はありませんでしたが、2009年度は補助金などの効果もあり60万kW強と大幅増となっています。需要が増えることで設置費用の単価も下がり、また、電気の買取制度もあるため導入しやすくなります。節電のため電球をLEDに変える方が増えていますが、太陽光発電はまだまだ設置費用が高価であるため導入に足踏みをしている方も多いようです。

共用部の電気代に充当、貸室の電気代を軽減、非常時に電気を供給できるなど、今後、太陽光発電及び蓄電は賃貸経営という観点から見た場合、他物件との差別化という意味でより注目されるようになっていくと考えられます。