最近の賃貸事情-Vol43 賃貸住宅管理業者の登録制度

  昨年12月施行された「賃貸住宅管理業者の登録制度」についてお話しします。

  不動産会社を規制する法律には「不動産取引仲介のための宅地建物取引業法」「分譲マンションを管理するためのマンション管理の適正化の推進に関する法律」などがあります。今回施行されたのは従来規制対象ではなかった賃貸住宅管理業者のための登録制度です。賃貸住宅は住宅ストックの1/4以上(約1,340万戸)を占め、その大半は個人所有です。そしてその約8割の所有者が管理会社に委託していると言われています。つまり、賃貸アパートやマンションの多くが管理会社という事業者によって管理運営されているのです。敷金の返還や滞納者の対応など、賃貸物件にまつわる問題が増えている状況を踏まえ、トラブルを減少させる目的で管理会社の業務に一定の規則を定めたのが「賃貸住宅管理業者登録制度」です。

  本制度の対象は「管理事務」を業としている場合であり、「賃貸人から委託を受けて管理する場合」と「賃貸住宅を転貸するサブリース業者」、さらに「毎月の家賃を代行して集金し保証している保証人代行会社」も含まれます。所有者が直接管理を行なう場合と、建物や設備の保守・点検業務のみの場合は対象外となります。また、居住用が前提となり、事務所ビルや駐車場、店舗併用住宅の店舗部分については対象外です。

  本制度に登録した業者に課される義務は下図のとおりです。

  また、国土交通省へ年1度の報告義務もあります。具体的には管理受託の契約件数、棟数と戸数、サブリース(転貸借)の契約件数や棟数と戸数、年間の受託金額(管理報酬)、財産(預かり金)の分別管理等の状況などです。これらは国土交通省が適切に把握するほか、閲覧可能とすることにより取引関係者が管理業者を適切に選択・判断できるようにするためのもので、登録業者の経営規模や経営状況の審査が目的ではありません。あくまで賃貸人や賃借人が賃貸住宅や管理会社選択の参考にするのが目的で、国交省が特定の管理方法を求めるものではありません。その他、入金家賃を賃貸人ごとに勘定を明確に区分して管理しているか、預かった家賃を賃貸人に送金されるまで適切に分別して管理されているかを記載する必要があります。貸主ごとに専用口座を設けたり送金額を報告する必要はありません。

  全体的には昨今の賃借人保護の流れを前提にした内容と言えますが、12月の申請分が登録されるのは4月以降の予定であり、実際に運用されるまでは不明瞭な部分が多々残ります。また本制度は任意の登録制度であり、登録するかどうかは各管理会社の判断に委ねられ、登録しなくても管理業務を営むことは可能です。賃貸住宅の管理に関しては現在特段の法規制がないことや事業者の負担に配慮した結果、任意の登録という制度となりました。登録が特別の保証を与えるものではありませんが、「業務及び財産の分別管理等の状況」が公表されることにより事業者の信用が問われることになります。

  今後、賃貸住宅市場の供給過剰に伴って競争がますます激化し、必然的に質の良い賃貸管理が求められます。「賃貸住宅管理業者登録制度」の開設は、オーナー様にとっては管理会社選びの際の参考にすることができ、部屋を探す消費者にとっては管理会社を選別した上で賃貸物件を選ぶ際の目安になることが期待されています。

【賃貸住宅管理業務処理準則(抜粋)】
●賃貸オーナーおよび借主に対する管理内容についての重要事項説明と書面交付
●賃貸借契約更新時の書面交付
●賃貸借終了時の敷金精算額についての書面交付(原状回復費用の算定基準や金額の内訳などを書面で交付する必要があります)
●工事代などの金銭を借主から受領したときの賃貸オーナーに対する通知
●賃貸人への管理事務に関する定期報告