最近の賃貸事情-Vol44 老朽化家屋問題

街を歩いていると、ところどころに老朽化した建物が存在し、中には長い間誰も住んでいない古い家が放置されているものもありますが、このような空き家が今、問題視されています。

長期間メンテナンスされていない古い建物は地震による崩壊や景観の悪化、悪臭の原因になるなど防災や防犯面の問題が指摘されており、各自治体は対策を迫られています。実際、老朽化した建物の外壁が崩れて歩道に落下するなどの事故も起こっています。

空き家問題は人口の減少が深刻な地方の問題として位置づけられていましたが、首都圏でも若い世帯は新しい住宅を取得し、狭くて古い家には戻らずにそのまま放置しているケースが増えています。

東京都足立区や埼玉県所沢市、千葉県柏市では老朽化した建物の所有者に修繕や解体を求める条例を制定しました。崩壊などの恐れがある建物を特定し、特に危険度が高いものに対しては登記簿の確認や周辺住民へ聞き込みを行って所有者を割り出しています。建物の修繕や樹木の伐採などを求めるわけですが、解体を要請することもあります。

この条例の問題点は罰則規定を設けることが難しいため強制力に欠けることで、現時点では対応しない所有者を公表するに留まります。また、修理解体の費用負担や、住宅を解体撤去すると土地の固定資産税や都市計画税が上がってしまうことも課題となっています。住宅が建っている場合は住宅用地の軽減措置が受けられ、200㎡以下であれば固定資産税は1/6、都市計画税は1/3になります。住宅を解体撤去すれば建物の固定資産税等はなくなりますが、元々老朽化住宅は建物評価額が低いので、土地の固定資産税が上がった分と差し引きしても、結果として税負担が大きくなってしまいます。足立区では解体した場合に所有者へ最大100万円の助成が既に決定していますが、このような自治体が増えることを期待します。

日本の住宅の平均寿命は概ね40年前後といわれており、アメリカは100年前後、イギリスはさらに長いという状況があります。日本の住宅寿命が短い原因は生活様式の変化や住宅設備の向上などが挙げられますが、建物の価値観や国民性にも起因していると思います。しかし、定期的なメンテナンスとリフォームを行うことで日本の住宅の寿命を長くすることは可能です。

もともと一戸建ては住宅業界で潜在的な需要があります。別表は国土交通省の調査資料ですが、一戸建てに住みたいという要望は大変多く、賃貸市場でも一戸建ての需要はかなり高いのです。

大手ハウスメーカーでは一戸建てや二世帯住宅の使われていない一世帯分をリフォームして賃貸利用する提案をしているようです。用途はファミリー向け、シェアハウス、ギャラリーや教室等様々で、一戸建て住宅の賃貸化とシェアハウス化が促進されています。

建物は単に古いという理由だけで解体するのではなく再生も考える必要があります。危険度が高いものは解体、改修して使用できるものや価値のあるものは耐震性を強化した上で市場に出せば需要と供給のバランスが取れ、地域社会にもメリットがあります。

今あるものを有効活用し、官民が一体となって、地域と連携をとりながら進めることが大切と考えます。