最近の賃貸事情

最近の賃貸事情-Vol.20 オンシーズンの更新と部屋探し

当社では契約期間満了の約3ヶ月前に借主に対し更新通知書を発送し、1ヶ月ないし2ヶ月前までに更新するか否かの意思表示をしていただきます。

引越オンシーズン(1月、2月、3月)の当社の契約更新率は、ここ数年80~85%で推移していますが更新対象者の数は年々減ってきています。これは期間満了を待たずに解約する借主が増えてきているからと考えられます。

図の「転居を思い立ったきっかけアンケート」によると、「更新時期がきたから」と「今よりよい物件がみつかったから」が2大要因となっています。ファミリータイプの場合、「他の賃貸マンションに移る」より「一戸建やマンションを購入した」などの理由が多く、学生の場合、「入学したから」が40%以上、「進級して学校の場所が変わるから」が20%以上と高い比率を占めています。女性社会人の場合、「一人暮らしがしたかった」がトップで、それ以外(男性社会人、2人、ファミリー)の場合は主に外的要因(就職、転職、入学、卒業、転勤、結婚)がきっかけになっています。

部屋探しや引越に関する困ったことや不満としては「敷金、礼金など初期費用の高さ」「環境、間取、設備、騒音など入居後にわかった不満」「不動産会社の良し悪しがわからなかった」が多く、女性社会人は「不動産会社や営業マンの対応」に不満を抱いていることが多いです。

以下は最近のひとり暮らしのエンドユーザーが部屋を探す際、何を重視しているかのアンケート結果をまとめた項目です。

○一人暮らしの学生の平均家賃は男子59,600円女子64,600円。
○1Kタイプが54.8%あり、1DKの居住者は男子より女子が多い。
○近くにないと困るもの「スーパー」「コンビニ」、近くに欲しいもの「レンタルビデオCD店」「公共施設」
○欲しい設備は「エアコン」「収納」「ガスコンロ」「洗濯機置場」と「独立型バス・トイレ」で、男子は「エアコン」を重視、女子は「独立型バス・トイレ」を重視。
○探す人の立場に立ってくれる「地元の情報に詳しい不動産会社」を選ぶ。
○男子より女子の方がマンション志向。

女子は男子より部屋を重視(広い部屋に住み、家賃負担額が高い)しているという結果がでており、これは洗濯や料理をしたり、部屋にいることも多く、住環境、安全性を重視するためと思われます。

このようにエンドユーザーの「具体的な二ーズ」、「部屋探しの重視条件」、「引越しのきっかけ」も年々少しずつ変化しております。加えて昨今の供給の多さによる「競争が激しい賃貸事情」を考えると、賃貸条件及び設備、仕様について素早く適切な提案をし、最適な募集活動を行い、お客様に誠意を持って対応し、早期成約に至るよう努力していかなくてはなりません。

最近の賃貸事情-Vol.19 通信設備

パソコンの進化に伴い「光ファイバー」ヘのニーズが増えてきました。光ファイバーとは、ガラスやプラスチックの細い繊維でできている光を通す通信ケーブルのことをいいます。主な特徴としては「現在のメタルケーブルより通信速度が速い」「一度に大量のデータ送受信可能」「IP電話」などが挙げられます。光ファイバーに対するニーズが増えている理由は、パソコンが個人や家庭へ目覚ましく普及しており、インターネットで「買い物をする」「TVを見る」「映画や音楽をダウンロードして楽しむ」「レストランや旅館を探す」など、ビジネスだけでなくプライベートにおいても情報入手必須アイテムとして利用する時代になっているからです。

部屋探しをする際、光ファイバーがそのマンションに導入されているかどうかを確認する人が最近増えてきています。また、光ファイバーサービスを行っているメーカー(NTT・東京電力*テプコ・USEN)が、世帯数がまとまっていて引き込み交渉のしやすい賃貸マンションなどに、「無料で光ファイバーの導入工事をします」という提案も増えています。各社対象世帯数等の違いはありますが、どの業者も提案の際には必ず、「光ファイバーを導入すると空き部屋がすぐ決まります」「入居後の定着率が向上します」をセールスポイントとして挙げていますが、実際にはその言葉どおりの結果が現れてはおりません。それは「光ファイバー」がもはや付加価値(他物件との差別化)として評価されなくなり、借り手側からは「すでに当たり前の設備」との認識になりつつあるからだと思われます。その他の通信設備として、ADSL(既存のメタルケーブル使用)やCATVのIT接続システムなどがあることも光ファイバーの人気に水をさす原因です。ADSLは光ファイバーの約半分の通信速度やデータ送受信になりますが月額料金が光ファイバーよりは断然安くなっています。CATVはITだけではなく、TVとセットで契約すると20~30チャンネルの専門番組が見られるというメリットがあります。

とはいえ、昨今の貸賃住宅の設備事情は年々進化し、光ファイバーの需要もますます増えているため、新築マンションでは光ファイバーが基本設備になっています。設置料金、毎月の使用料など、NTTをはじめ各メーカー間の競争も激化しています。光ファイバーに限りませんが、設備の導入にあたってはしっかりとした調査と導入後のアフターサービスやメンテナンスを十分に検討した上で判断しなければなりません。入居者のことを考え導入してみたが、利用者がいない為に毎月の基本料金やメンテナンス費だけをオーナーが支払うということになりかねません。付帯設備、特に通信関係(CATV、光ファイバー、インターネット、パソコンなど)は現実より言葉が常に先行しており、メリットだけが一人歩きしている場合も多く見受けられます。最近のアットホーム社のアンケートによると、契約の決め手となった機能・付帯設備の上位に通信設備は顔を出していないのが現状です。

最近の賃貸事情-Vol.18 賃貸管理会社その2-滞納者への対応

今回は家賃滞納の督促・回収業務についてお話します。管理会社には「入居者管理」の一つとして家賃滞納者ヘの督促・回収業務があります。滞納者は「初期滞納者(契約書通りに入金がない)」「慢性的滞納者(常習者、不定期に入金する)」「悪質滞納者(3ヶ月以上)」の3種類に分けることができます。滞納者について、賃貸事業部・滞納係では下記のような取決めをしております。

滞納者を減少させるためには初期対応が一番有効です。毎月の家賃入金チェックが遅れてしまい気がつくと何ヶ月も滞納になっていたケースもあります。こうなると回収にかなりの時間を要します。入居者に「支払いが遅れても何も催促されなかったから」などと言い訳を作らせないことも必要です。早期に督促をしないと滞納者がそれに甘えるだけでなく、貸主側の怠慢にもなってしまいます。ですから毎月定期的な入金チェックが必要なのです。

一般的に滞納の理由は「お金がない」がほとんどですが、最初は数日遅れ、徐々にそれが習慣になり、数ヶ月遅れになってしまうパターンが多くあります。稀に「払う意思がない」「建物の不備を理由に払わない」など悪質なケースもあります。累積滞納者は連帯保証人へも報告し督促しますが、保証人が対応しない場合、法的手段(裁判)に訴えて「契約解除」「明け渡し請求」「強制執行」などの方法で解決することもあります。この場合、半年~1年という長い時間と相当な費用が必要です。

滞納を未然に防ぐ手段としては、入居申込時に「本人」と「保証人」を充分に審査することです。しかし契約時には問題ない人でも契約後に「転職」「リストラ」「ギャンブル」「病気」など収入や生活環境が変わることがありますので、どんなに入居審査を厳しくしてもやはり「滞納」がなくなることはないでしょう。そのため最近では、「滞納保証システム」「保証人代行システム」(vol.11参照)を利用するケースが増えつつあります。

●滞納の原則
滞納とは契約書通り入金のないすべての状態を指し、たとえ1日でも入金が遅れた場合、滞納であり契約違反である。
●滞納者督促履歴表の作成
滞納者リストに基づきすべての滞納者について、催促の「電話」「ハガキ」「手紙」「訪問」「電報」「内容証明」等の督促履歴表を作成する。
●滞納者の対応

最近の賃貸事情-Vol.17 賃貸管理会社

最近、賃貸マンションにおいてエンドユーザーやオーナーが賃貸管理会社に何を求めているのかが話題になります。今回はこの件についてお話しをさせて頂きます。

従来、管理会社とは分譲マンションの管理組合が委託する「建物管理会社」を指していましたが、最近言われる「賃貸管理会社」とは賃貸マンションの「オーナー業務を代行する会社」のことです。その業務内容は入居者募集、賃貸借契約の締結、更新業務、退去時の立会いや敷金精算などが主な仕事ですが、他に重要な業務としては入居中のクレーム対応や近隣住民からの騒音やゴミ処理などに関するクレーム対応があります。このような「入居者管理業務」のみを行う賃貸管理会社と「入居者管理業務」と「建物管理業務」の両方を行う賃貸管理会社があります。

「建物管理」とはエントランスや廊下や階段などの共用部分の清掃や、建物の設備機器の保守・点検が主な仕事になります。また、長期的な計画を立て、設備の修理交換、外壁の塗り替えや防水工事、大規模修繕のアドバイスもいたします。

最近エンドユーザーが部屋を探す際に「仲介会社」より「賃貸管理会社」を重視するようになってきています。これは物件紹介から契約までで終わる「仲介会社」よりも入居から退去まで係っていく管理会社の建物管理状況・管理体制を重要と考えているからです。当然入居時の契約条件(賃料、敷金、礼金など)は大切ですが、入居中のトラブル時の迅速性や、24時間対応緊急センター設置の有無、共用部の清掃が行き届いているか、など入居中の快適性を重視してきているようです。オーナーが希望する「入居者管理」とは空室対策の具体的な提案と工夫、そして入居率のアップ(早期の客付け、入居中や退去時のトラブルの未然防止、トラブル発生時の迅速な対応などです。

現地案内する場合、室内が汚れていても、また共用部分が汚れていても、案内された人は入居申込をしないでしょう。入居者管理と建物管理は常に密接な関係が必要です。特にトラブルや緊急対応を要する場合にその関係が処理に大きく影響します。

あるアンケートではエンドユーザーが不動産会社を判断する際、一流かどうか、大手かどうか、有名かどうかではなく、「顧客を大切にする」「信頼性」「誠実」「接客対応」などを重要視するそうです。賃貸マンションにおいて私たち賃貸管理会社の重要性がクローズアップされるようになったことで、今まで以上にオーナーの良いパートナーとして真剣に賃貸業務に取り組み、トータル的な管理が求められていくと思います。

最近の賃貸事情-Vol.16 個人情報保護法について

近年のIT社会において、個人情報の漏えい、プライバシーの侵害等の懸念が増大し、個人情報の保護の重要性が高まってきたため、平成17年4月1日「個人情報保護法」が施行されました。この法律は「個人情報の適正な取扱」を基本理念として、個人情報を取扱う事業者の義務等を規定しており「個人情報の保護」「個人の権利・利益を保護」を目的としています。要約すると、個人情報をデータベース化したものを保護するため、これらを取り扱う事業者(個人情報取扱事業者)に法的義務を課したものです。

「個人情報」を「保護」する法律という用語から「個人情報保護」とは「プライバシーの権利が保護される」と誤解しがちですが、個人情報保護法が「保護」しようとする「個人情報」はプライバシーの権利と一部は重複するものの、基本的には別のものと考えられます。

不動産、特に賃貸管理業は、消費者の氏名、年齢、住所、電話番号、勤務先、年収、その他物件情報、成約情報など多様な個人情報を取扱う業種であり、物件情報の広告など、個人情報の第3者への提供が仕事の重要な内容であるという大きな特色をもつ業種です。適切な対応をしていくことは、不動産業における個人情報の利用に関する消費者の信頼を高め、業界全体の発展につながっていくと考えております。

当社としては、今後個人データの入手、管理(開示、内容の訂正又は追加、消去など)に更なる注意を払い、社内規則を設け、徹底した管理を行っていかなければなりません。また、この場をお借りして、法律の施行に伴いオーナーの皆様のご理解とご協力をお願い申し上げます。
なお、個人情報保護法に関する詳細は下記資料をご参照下さい。
・平成15年5月30日「個人情報の保護に関する法律」
・「国土交通省所管分野に係る個人情報保護に関するガイドライン」

個人情報保護法とは
●対象は
個人情報データベース等を事業の用に供している者のうち、取扱う個人情報が過去6ヶ月において1日でも5000件を越えた者。

●個人情報とは
1.氏名、生年月日、住所、電話番号等のように特定の個人を識別できるもの。
2.生存する個人の情報
3.文字だけでなく画像や音声も含む。

●個人情報データベースとは
個人情報の集合物で、誰でも検索可能の状態になっているもの。

●その他
社内組織やシステム等、様々な安全管理を義務付|ナている。対象とならない個人や企業も同様の努力が必要。
①組織的安全管理措置②技術的安全管理措置
③人的安全管理措置 ④物理的安全管理措置
⑤委託先の指導監督

最近の賃貸事情-Vol.15 今どきの賃貸マンション

今回は最近人気の賃貸マンションについて具体的なポイントを挙げてお話しいたします。

1.広さと間取り
10年前と比較すると専有面積が広くなっており、居室以外に「水まわり」もゆったり、「収納」も豊富になっています。従来シングルタイプは21㎡(洋7・K2)前後でしたが最近は28㎡(洋10・K2)前後の部屋が多くなり、2DKタイプは45㎡(洋6・和6・DK 8)前後から52㎡(洋6・洋6・DK10)前後の広さになっています。また、2DKの場合、一部屋が和室でしたが最近では二部屋とも洋室タイプに変化し、カウンターキッチン付も増えています。

2.仕様、設備など
10年前のシングルタイプはほとんど1口電気キッチンでしたが、最近は2ロガスキッチンが多くなりました。また、ワンルームでも「バス・トイレ別々、室内洗濯機置場、ガスキッチン」今は必須条件です。2DK以上は「追い炊き機能付バス」が主流で「浴室換気乾燥機」も一般的になっています。現在フローリングの割合は8割近くにまで増加しており、バリアフリーも増えました。エアコンはほぼ全ての物件に設置されています。さらにインテリア性の高いダウンライトやピクチャーレールも登場しており、便利、快適なだけでなく、スマートな暮らしが求められています。

3.セキュリティ
注目度の高いセキュリティですが、新築マンションの9割にオートロックが設置されるようになり、防犯カメラ、TVモニター付きインターホンの設置率も高くなってきています。また、ダブルロックや防犯機能付き玄関キー、指紋照合システムまで登場しています。

4.その他
ここ10年でペット可の物件が3%から12%に増えました。その他「楽器可」「大型バイク置場」「サーファー向け」物件なども登場してきました。どの物件にもCATVや光ケーブルなどの通信設備が充実したこともここ10年見逃せない変化です。

以前は「オートロック」「タイル貼り」「エアコン付」「フローリング」をセールスポイントにできましたが、今ではさらなる付加価値やコンセプトが必要になりました。

10年後20年後の予想は難しいところですが、いつの時代もニーズと流行があり、やがてそれは変化します。ニーズは大切ですが、一時的な流行にはとらわれ過ぎないことが大事です。借り手側のニーズに合わせた新しいマンションが増えるとニーズに合わない古い物件は競争に負けてしまいます。今は新築マンションでさえニーズに合わなければ競争に負けてしまう時代です。賃貸マンションを企画する際、今何が求められ将来何が求められるのか、しっかりと考えていかなければなりません。

最近の賃貸事情-Vol.14 東京ルール

今回は「東京ルール」についてお話しいたします。

「東京ルール」とは東京都が「東京における住宅の賃貸借に係る紛争の防止に関する条例」として制定し、平成16年10月1日に施行されたものです。この条例の特徴は借主に対し宅地建物取引業者が重要事項説明書とは別に書面(説明書)を交付し、退去時の原状回復と入居中の修繕について、費用負担に伴う「法律上の原則」や「判例により定着した考え方」などを説明することを義務付けているものです。

具体的に説明する事項は、下記のとおりです。
①退去時の通常損耗等の復旧は、貸主が行うことが基本であること
②入居期間中の必要な修繕は、貸主が行うことが基本であること
③賃貸借契約の中で、借主の負担としている具体的な事項(特約)
④修繕及び維持管理等に関する連絡先

説明義務の適用対象は「東京都内にある居住用の賃貸住宅」のみであり、店舗・事務所等の事業用物件は対象外になります。また、東京都も退去時と入居時の修繕における貸主・借主の費用負担などの基本的な考え方を示した「ガイドライン」を今年9月に発行しました。この内容は以前お伝えしている国土交通省発行のガイドラインと同じです。貸主は「東京ルール」に特約を設けて対応することが可能です。そのため契約時に「東京ルール」の説明をしても根本的な問題は解決しないのではないかと思われます。このようなあいまいなガイドラインやルールは、それぞれの解釈の違いによってかえってトラブルを助長することも予想されます。

「東京ルール」には他にもいくつか問題点があります。例えば、宅地建物取引業者が借主に対しての説明義務であり、貸主に対して説明する義務はなく、また貸主が借主に対して説明する義務はないとあります。トラブル未然防止の徹底をるためには、借主だけではなく、貸主に対しても説明し、理解を得ておくことも大切なことと私たちは考えています。

宅地建物取引業者が説明義務に違反した場合は、東京都知事より指導、勧告、公表をされます。当社としても重要事項説明書や賃貸借契約書の内容を見直し、あいまいな表現のガイドラインやルールに対応していかなくてはなりません。賃貸借契約の原状回復費用及び修繕費用は、原則としてすべて貸主負担になりつつあり、業界はますます借り手有利の賃貸状況になっています。この賃貸事情をご理解いただき、「ガイドライン」や「東京ルール」についての今後の対応に、ご理解とご協力をよろしくお願いいたします。

<東京都の相談窓口一覧>
東京都都市整備局
住宅政策推進部不動産業課
新宿区西新宿2-8-1都庁第二庁舎3階北側
◆不動産取引に関する相談
9:00~11:00/13:00~16:00(面談相談、当日受付)
◇賃貸ホットライン(電話相談)
TELO3-5320-4958
◇指導相談係
TELO3-5320-5071

東京都不動産取引特別相談室
新宿区西新宿2-8-1都庁第二庁舎3階北側
◆弁護士による法律相談
13:00~16:00(面談相談、予約制)
◇特別相談室TEL03-5320-5015

東京都消費生活総合センター
新宿区神楽河岸1-1セントラルプラザ16階
◆消費生活に関する相談(不動産含む)
9:00~16:00(電話、面談相談)
◇相談専用TEL03-3235-1155

最近の賃貸事情-Vol.13 敷金の精算(その2)

今回も前回に引続き「敷金の精算(原状回復)」についてお話したいと思います。
テレビや新聞、雑誌といったマスメディアで原状回復・敷金精算の問題が数多く取り上げられるようになり、平成12年頃から全国の消費生活センター等に寄せられる敷金精算をめぐる相談件数(参考1)は増加しました。

トラブルの主な原因は「通常使用」と「経年変化」の解釈の相違です。ガイドラインには「通常使用」と「経年変化」の考え方(参考2)が記載されており、具体例として、「ジュータン等にシミを放置し、手入れ不足でできたシミやカビは借主負担」と、解釈に疑義が生じるように書かれており、ガイドラインに沿った場合、解約精算が余計混乱することもあります。

トラブルは主に以下に挙げる借主のケースで発生します。
1.契約時、契約内容を理解せずに署名捺印してしまう
2.契約内容に納得して署名・捺印しても解約時に覆す
3、ガイドラインが全て正しいと考えている
4.間違ったことを入れ知恵される。また、オーナーの原状回復に対する認識と対応の違いもトラブルの原因になる場合があります。長期間居住してできた汚損等をすべて借主にむけるオーナー、長期間居住したので内装費は自分が持つという考えのオーナー、まちまちです。

賃貸借契約そのものが約束であり、法律ではないこと、地域による慣習の違い、契約と裁判とのギャップ、これらもまた敷金精算問題を複雑化しています。平成10年10月からスタートした「少額訴訟制度」に伴い、原状回復条項に異議を唱え、実際に法的手段に訴える借主も増えています。また、平成13年4月に施行された消費者契約法では「借主に一方的に不利と考えられる契約内容は無効」という規定になっています。

契約内容をどうするか、どのような特約が必要か、見直しが必要な時期です。わたしたちは、個々の契約のみならず、経済、業界、賃貸事情、慣習、民事、法律、裁判、これらの情勢を見ながら、賃貸経営を成功させる賃貸管理を展開していくことが必要になります。

最近の賃貸事情-Vol.12 敷金の精算

今回は注目されている「原状回復(敷金の精算)」についてお話しいたします。

当社では契約時に契約内容を詳しく説明していますが、最近の傾向として、借主が予め契約内容を確認し、不利な条項・条文について削除や訂正の要望を出すことが多くなっています。また契約時、契約内容に納得して署名捺印しても、解約時に「不当なのでは」と覆す人も増えています。ご存知の方も多いと思いますが、その要因のひとつに国土交通省から発行されている「原状回復ガイドライン」の存在があります。これは、平成5年に建設省が住宅宅地審議会の答申を受けて作成した賃貸住宅標準契約書、民法や判例などの考え方を踏まえ、原状回復をめぐるトラブルの未然防止と円滑な解決のため、契約や退去の際に貸主・借主双方が予め理解しておくべき一般的なルール等を示し、平成10年3月に発行されたものです。内容を一部紹介すると、「たばこのヤニ汚れについてはクリーニングで除去できる程度の汚れは通常の損耗の範囲であると考えられる」と明記されています。一般的な契約書では、たばこのヤニ汚れは借主負担、と記載されていることが多いのですが、「ガイドライン」ではクリーニングで除去できる程度…とあいまいな表現になっており、逆にトラブルの原因になる場合があります。また、マスコミが「原状回復の問題」の極端な例だけを取り上げて、大げさに報道しているため、解約時の敷金精算がスムーズに進まずトラブルに発展するケースも増えました。

毀損・破損は別として、汚損に関しては各自判断基準がまちまちで、認識・感覚がそれぞれ異なるところです。契約書に「自然損耗及び磨耗は貸主負担、破損、汚損は借主負担」と明記されていても、何処までが自然損耗で、何処からが汚損になるのか、各自捉え方が異なるため話し合いが難航します。

この「ガイドライン」が平成16年2月に改訂されました。改訂の大きなポイントは、入居時に原状回復確認リストを作成し、当事者が立い会いのもとで部位ごとの現況を確認することの提示と個別具体的な事例が盛込まれた事です。また、新聞やTVなどで報道された「東京ルール(敷金精算についての条例案)」を東京都が検討を始め、議会で承認されれば今年9月頃の施行になるようです。「東京ルール」とは、業者が重要事項説明とは別に「原状回復ガイドライン・契約書で定める原状回復の内容一入居中の修繕は原則的に貸主負担である旨・契約書で定める修繕内容」の説明を義務づける事が予想されています。

「ガイドライン」や「東京ルール」は入居者保護に傾いていると考えられますが、これからはますますこの傾向が強くなると思われ、借主から修繕費を徴収することが困難になるでしょう。現状(借り手市場)の賃貸事情やトラブル・判例等を考えると、この原状を認めるしかないのかもしれません。今後は私たち業者も、オーナーの方もこれらの制度内容を理解していかなければなりません。そして慣習や賃貸条件・契約内容の変化に伴い、お互い協力し合い、新しい角度で賃貸経営の成功を考えていくことが必要になります。

最近の賃貸事情-Vol.11 保証人代行システム

今回は、「保証人代行システム」についてお話しをします。部屋を借りる際の賃貸借契約には連帯保証人が必要です。連帯保証人とは、契約に関わるすべての債務に対して借主と同様の責任を負うことです。当社は個人申込の場合、申込人の両親あるいは関東近県に居住する親族で、安定収入がある方を「連帯保証人」として立てていただいております。法人契約の場合も、原則として連帯保証人を立てていただいておりますが、上場企業など大手法人申込の場合、例外的に連帯保証人ナシの契約もあります。また、法人契約で連帯保証人を立てる場合、その規模によって法人の代表者、入居者、第三者となります。

最近、連帯保証人を「頼みにくい」「頼みたくない」「頼む人がいない」などの理由で「保証人代行システム」を希望する人が増えています。その要因は、「人間関係が希薄」になっていることと、「契約をシビアにドライに考える傾向」があると思われます。この保証人代行システムとは、借主が「保証会社」に一定の手数料を支払う事により「保証人」になってもらい、賃貸借契約を締結するシステムです。具体的には保証会社が申込人を審査し承認した場合、借主が支払うべき毎月の家賃・管理費・駐車料等を保証するシステムです。保証対象は毎月借主が支払うべき金額だけですが、稀に原状回復費用や立退訴訟費用まで保証する会社もあります。

保証人代行システム〈参考例〉
保証対象   毎月の支払額(家賃・管理費・駐車料金等)
対象金額   家賃等合計3~30万円(相談可)
対象物件   居住用賃貸住宅
対象契約者   20~65歳未満の個人
保証の有効期間   2年または1年(契約期間中)
保証の限度額   月額対象金額の最長6ヶ月
保証料(手数料)   2年で賃料の35%、1年で賃料の20%(消費税ナシ)
支払方法  契約時または更新時
備考  未納賃料は退室後精算

このシステムは主にカード信販会社が取扱っていますが、最近ではこのシステムを専門で取扱っている会社もあり、保証内容もさまざまです。

「保証人代行システム」を利用するメリットとしては「督促業務の削減」「安定収入の確保」と「入居率のアップ」が考えられます。反対にデメリットは保証対象が家賃のみで原状回復費用や立退訴訟費用は対象外であること、未納家賃の精算は退室後になることです。また、滞納が発生した場合、家賃の入金状況(通帳記帳)に加え「督促の詳しい履歴」を保証会社に報告をする煩わしさもあります。

「保証会社」を選定する際は保証内容が大切ですが、最も注意しなければならないことは会社そのものがしっかりしていることです。また2年ごとに再審査があり、承認されなかった場合、連帯保証(保証人・保証会社)ナシという事態が発生してしまいますので、保全対策としてその際の特約事項を設けて契約することも大切です。

最近は「保証人代行システム利用可能」を募集広告にアピールしている会社も見かけます。部屋を探している側に、「連帯保証人を用意しないで契約できる」という魅力があるからでしょう。これからはお金で解決できるものは解決しようという考え方が強くなっていき、部屋を借りる場合も保証料を払って「保証人代行システム」を利用してゆく時代になるのかもしれません。