最近の賃貸事情

最近の賃貸事情-Vol.30 リフォーム工事のDIY

今回は賃貸経営をする上で必ず発生する入居者入替時のリフォーム工事についてお話します。ガイドラインや東京ルールによって工事代は貸主側の負担を余儀なくされ、加えて工事代も上昇傾向、これらはダイレクトに利回りに影響します。そのような中、個人オーナーを中心に工事代の節約を目的としたDIYが一部で注目されています。

元々DIYとは「Do It Yourself」の略で、直訳は「自分自身で作ろう」、概念は「住まいと暮らしをよりよいものにするために、自らの手で快適な生活空間を創造すること」で、この考え方はイギリスで始まりました。イギリスでは築100年という建物があちこちに並び、新築物件は市場にあまり多くはありません。そのため若者達は古い物件を購入して自分流にアレンジします。 このアレンジがDIYと言われるもので、アメリカや日本へと広まっていきました。現在、日本でもあちこちにホームセンターがあり、壁紙、床材、ペンキ、また日曜道具はもちろん、プロが使用する道具まで何でも揃います。

入替工事の方法は概ね4パターンに分かれ、それぞれにメリットとデメリットがあります(下表)。
リフォーム工事は新築より手間を要し、仕上がりに差が出やすいものです。完了後だけを見ても工事の良し悪しは判らないところもあります。下地処理、クロスの張り方、排水関係や設備関係など隠れている箇所の工事も重要です。

「価格優先」「工事の質を優先」「煩わしさナシを優先」など、何を優先するかによって選ぶ方法が決まります。安くて、工事がよくて、面倒がない、すべてを望みたいところですが、なかなか現実はそうはいかないようです。

新築時もさることながらリフォーム工事も同様で、価格だけでなく工事の質と内容、商品性、効率性、耐久性、人気の設備、入居者のニーズなど、さまざまな要素を充分に考慮し決定することが最良の方法だと思います。

入替工事 施工者ごとのメリット・デメリット

1.管理会社に依頼
管理会社社員が必要工事箇所の提案をし、自社または提携の工事会社が施工します。効率や合理性を考え必要最小限、かつ募集に有効な工事内容を提案します。入替工事はただ単に原状回復するだけでなく、仕様や付帯設備も含め、常に競争力のある物件を目指し提案しなければならなりません。このケースは前入居者との精算や新入居者の入居時期に対してもフレキシブルに対応できます。

2.オーナーが直接工事会社に一式で依頼
退出後の室内を確認し、工事箇所を決め、価格や工事内容を調整後、オーナーが直接工事会社に発注します。1番目に比べ変更や追加工事がある場合など、打合せ、交渉、工事進行に時間を要することがあります。

3.オーナーがクロスの貼替え、清掃、設備工事など、工事内容ごとに個別に直接業者に発注
退出後の室内を確認し、工事箇所を決め、価格や工事内容を調整後、オーナーが直接各工事会社に発注します。工事には順序が必要なため、段取りを充分考えて手配しなければなりません。各業者が入替工事に精通しているかどうかも重要です。各業者から完了報告の後、リフォーム全体の最終確認もオーナーがしなければならず、工事に関するさまざまな知識がオーナーに求められます。

4.オーナーご自身で行う工事、いわゆるDIY
メリットはやはりコスト面。一番低く抑えられますが、その分オーナー自身の手間がかかります。賃貸経営に専従の方、手先が器用でDIYが好きな方には適しているかもしれません。手間隙以外のデメリットとしては、工事業者と疎遠になり、プロにしかできない工事が発生したときに受けてくれる会社がなくなる不安があります。また新商品や流行などの情報が入らず、人気のない部屋になり、空室が長期化してしまうケースも考えられます。

最近の賃貸事情-Vol.29 入居者のモラル

最近、入居者のモラル低下が新聞各紙で話題になっています。

一般常識やモラルは社会生活において最低限の約束事です。さらに共同住宅においては戸建住宅と違いたくさんの人が同じ建物に住み、また共用部分(ゴミ置場、階段、廊下、エレベータ、駐車場、駐輪場など)があるため様々な規則やマナーがあります。しかしこれらを守らない入居者や来訪者、自分勝手な考え方の人が増えています。コミュニティーである共同住宅において皆が快適に暮らすためにはモラルとマナーがとても大切です。

入居申込み後のキャンセルも最近とても多くなりましたが、これもモラルの低下でしょう。「申込みに対する責任」と「キャンセルに対する責任」を感じないのでしょうか。

家賃の滞納についても「仕事が忙しく銀行に行く時間がない」「車を買ったので払えない」など、理由にならないことを言い出す滞納者や「しばらく浴室の電気が点かなかったのでその間の家賃は払えない」「お湯が使えなかった日数だけ家賃をまけろ」など理不尽な要求をしてくる人が増えました。お金はあるけれど給食費を払わない親がいるように、お金があるにもかかわらず建物や部屋に難癖をつけて家賃を払わない、要するに払えないのではなく、「払いたくない」「払う必要がない」といった歪んだ考え方が蔓延しています。

賃借人だけでなく連帯保証人も、「払えないものは仕方がないだろう」「借主から回収できないのはそちらの能力の問題だろう」などと開き直る人、遠方に住んでいるのを逆手にとって「取りにこられるなら来てみろ」と言わんばかりの人もいます。

ゴミの問題も深刻です。東京の多摩地区ではゴミの有料化が始まり、市指定のゴミ袋を使用しないとゴミを回収してくれなくなりました。指定外のゴミ袋や回収後に放置されたゴミの後始末は町内会、あるいは建物所有者に責任があります。コンビニのダストボックスや公園のゴミ箱に家庭ゴミを捨ててしまう人、賃貸マンションの専用ゴミ置場に捨ててしまう近所の人、さらに、洗濯機などの粗大ゴミをアパートの空きスペースに捨てられたこともありました。この場合も、貸主側の費用で処分しなければなりません。

賃貸業界はモラルやマナーに欠けている人への対処が増えていますが、先日あるマンションのエントランスとエレベータ内に防犯カメラを設置したところ、それまで度々あったイタズラ書きがなくなりました。このように防犯カメラは泥棒や不審者対策だけでなく、入居者や来訪者によるイタズラを防ぎ、入居者のマナーとモラルの向上にもつながる効果があります。

規則を守りマナーやモラルをきちんと具えている入居者がほとんどですが、契約違反はしないがマナーが悪くモラルもない入居者が増えているのも事実です。入居者の指導は契約違反以上に難しい問題ですが、できるだけ努力してみなさんが快適に暮らせるよう、モラルの向上を目指したいと考えております。

最近の賃貸事情-Vol.28 入居者退去の動向と長期入居の工夫

今回は入居者の退去に関わるアンケート結果をもとにお話したいと思います。

まず図1をご覧ください。

退去理由の1位は「転勤による引越」、2位「自宅購入」、3位「結婚による住み換え」、4位「家族構成の変化」、この4位までが大部分を占めており、ここ数年このバランスはあまり変化しておりません。また、賃料、立地、設備、管理など、物件に不満を持ち退去される方が年々増加しており、残念ながら当社の管理物件においてもこの傾向は見受けられます。立地の不満以外はご連絡をいただければ対処できることも多いのですが、申し出ずに退去してしまうケースも少なからずあるのが現状です。貸す側もできるだけ入居者とコミュニケーションを取り、入居者意識を把握し解決策を見出すことが大切です。

次のアンケートは、現在入居中の30~40代の住み換え意識調査(図2)です。10人中6~7人は引越を考えています。『今住んでいる家の不満は?』(図3)の問いの1位は「狭い」、2位「使いづらい間取」、3位「駅から遠い」、4位「老朽化している」と続きます。特に不満はないという回答は約2割でした。

2年前のSUDO NEWS「更新と部屋探し」でも触れましたが、更新時に解約する人が増えています。引越を考えてはいるが躊躇している人の多くは契約金と引越代金などの出費を懸念しています。更新するかどうかのポイントには更新料の存在がありますが、更新後に引越するよりは更新前のほうが更新料の分を節約できるという考え方もできます。いずれにせよ更新時期が引越をする機会になっているのは事実です。

一昔前は入居者入替の際に室内のチェックが出来、また次の入居者も決まりやすく、加えて賃料値上げが可能なため適度な入替えは良いという見方が主流でしたが、今はリフォーム費用の大半をオーナーが負担し、賃料も上げられず、また募集してもすぐには入居者が見つからないのが現状です。

そのような中では、転勤などやむを得ない場合は別として、当面は解約を避け長期間住んでいただくことが重要になってきています。そのために更新時に入居者へクオカードを配布、設備の交換やクロスの貼替え、中には更新料を免除するオーナーもいらっしゃいます。いずれも入居期間をすこしでも長くするために、入居者にメリットがある取組みを積極的に取り入れているのです。

ほとんどの入居者は物件が気に入って住み始めたのです。しかし、近隣環境、買い物、飲食店の状況、隣人との関係など、実際に住んで初めて分かることもあります。物件の性質上どうにもならないこともありますが、入居期間が長くなるように対応可能な問題を解決してゆくのが得策です。他には、設備の故障や騒音の問題など、要望やクレームに迅速に対応することも入居の長期化に繋がります。また、夜間のライトアップや共用部分に癒しの空間など、プラスαのサービスを行うことも重要です。

建物や部屋のハード面、契約やクレーム対応のソフト面、いずれも入居者の満足を得られるようにしてゆくことで長期入居者が確保できると考えており、引続き、サービスの向上をめざして業務に取り組んでいきたいと思います。

最近の賃貸事情-Vol.27 賃貸不動産経営管理士

賃貸不動産の管理に比重をおいた資格は数年前から存在していましたが、これは「日本賃貸住宅管理協会」と「全国宅地建物取引業協会連合会」と「全日本不動産協会」の3団体がそれぞれ独自に認定したもので、資格の名称も統一されていませんでした。そこに「日本住宅建設産業協会」が加わり、昨年7月に4団体で構成される賃貸不動産経営管理士協議会が発足され、管理士資格の統一がなされました。この流れは管理業務主任者やマンション管理士と同様に、「賃貸不動産経営管理士」もいずれは国家資格になるものと考えられています。

不動産業者に対する宅地建物取引業法は、その名の通り不動産の取引に主体がおかれ、取引完了後の賃貸管理には間接的に影響を与えるだけでした。しかし実際の業務では民法や借地借家法、建築基準法、消防法、消費者契約法などさまざまな規制があり、相当な知識と経験が求められています。

賃貸不動産の管理業務が持つ公共性と社会的意義の重要性は年々高まり、トラブル未然防止の観点から所有者や入居者に対して、中立的な立場で透明性の高い情報を伝え、指導・助言・提案ができる専門家の存在というものが求められてきています。具体的には、所有者に対しては収益の最大化や資産価値を高める提案、入居者に対しては安心・安全な住環境とトラブルの予防・解決に向けたアドバイスを適宜提供することです。そういう知識・技術・能力・倫理観を持った賃貸管理のプロフェッショナルを育成することを目的として、今回の資格制度が創設されたことにより従事者の資質が向上すると思われます。

元々賃貸管理については貸主自ら借主への対応をしていましたが、法律や慣習、権利関係や契約関係が複雑になり、さまざまな形で発生するトラブルに対応できなくなりました。加えて、ガイドラインや東京ルールの曖昧さと賃貸借契約書との関係、付帯設備の高度化に伴うクレームの多様化や複雑化、外国人入居者の増加、自分勝手な入居者の増加、24時間の緊急対応のニーズ、その他不動産証券化の影響や貸主の高齢化により賃貸経営の煩わしい業務を専門家に任せる傾向が強まり十数年前に賃貸管理業がスタートしました。アンケート資料(図1参照)によると、現在の管理委託比率は70%以上にのぼっています。

管理委託内容は「募集」「契約」「退去」と「滞納処理業務」が全体の約6割ですが、その他コンサルティング業務や長期的な事業収支計画や修繕・建替計画の委託率も年々高まっています。

貸主の収益を最大限に維持するためには、借主に快適・安全に長期間住み続けていただき高い入居率を確保することが課題です。私たち管理会社は資産運用のプロとして、また生命と財産を扱う観点から高い倫理と使命感を持って業務に望む必要があります。

システム管理部 荒原

最近の賃貸事情-Vol.26 人口にみる今後の賃貸事情

昨年の日本人の人口は約1億2615万人で前年より約5万人減少し、年齢別で見ると15歳以上64歳以下が全体の65.5%で、平成4年をピークに低下しています。65歳以上は全体の20%を超え、連続して増加しています。昨年の出生率は1.32人で、人口は年々減少し、特に賃貸世代である若い人の減少が予測されます。しかし、世帯数を見ると、国立社会保障・人口問題研究所の調査では、2000年から2020年までに約245万増加する見込みであるとしています。人口は減っているのになぜ世帯数が増加するのか。その理由は高齢化や晩婚化により核家族化が進むからです。そこで単身・少人数世帯向けの住宅が必要とされ、今後の賃貸経営においてポイントになると言えます。少人数世帯の高齢者や晩婚化による30代、40代の単身者は自由にお金を使えるため、生活に余裕があります。今後これらの層が賃貸事業のターゲットとなり、余裕があるが故に、環境、広さ、間取、付帯設備、機能性、バリアフリー、各種サービスなどを厳しく求めてくるでしょう。供給する側としては、この点も重要です。

今年定年を迎えた団塊の世代は退職金や年金を受取ることができます。持ち家率が高い世代ですが、アンケート調査によると郊外に所有している一戸建を貸すか売るかして、都心に住替を希望している人も多いようです。旅行や買い物に便利ということもありますが、高度な医療を迅速に受けられることが一番の理由のようです。

最近の分譲住宅やマンションは月々家賃並みの支払で購入できるようになりました。しかし、リストラに対する不安や不安定な市場性もあり、長期ローンに対して足踏みをする人も多く、また、趣味や娯楽を謳歌したいなどの理由で、年々賃貸派が増えています。この傾向はしばらく続くと思われ、特に若い世代に強いと思われます。

最後にもうひとつ、今後の賃貸事情を考えて外せない傾向はルームシェアです。特に最近、都心部でルームシェアを希望する若者が増えています。その理由は「経済的負担を軽くしたい」人が80%で一番多く、続いて「一人暮らしは寂しい」「楽しそう」などです。少子化により子供一人にかけるお金は増加していますが、20代のニート現象などのように大学を出ても就職しない人も増えており、若者の貧富の差はますます激しくなり二極化現象が現れています。

ルームシェアが増えているもう一つの理由は在日外国人の増加で、毎年数万人ずつ増え続けており、現在約200万人、岡山県の人口とほぼ同じです。外国人は日本人以上にルームシェアを好みます。

日本人の人口減少を考えると、今後外国人労働者が日本企業の労働人口として重要な役割を果たし確実に増えていくでしょう。今後の賃貸経営は少人数世帯の動向に注目し、また、地域によっては外国人労働者をターゲットにする必要があるのかもしれません。

最近の賃貸事情-Vol.25 データで見る最近の賃貸事情

今回はアンケート結果を元に最近の賃貸事情をお話したいと思います。賃貸市場について、数年前から賃貸派が増えていますが、供給も過剰といわれています。また、人口については外国人が増加し日本人が減少しています。外国人は10年前の1.5倍で現在200万人を超えています。外国人をターゲットにしている会社にとってはビジネスチャンスです。世帯状況を見てみると首都圏の一人暮らしが昭和60年から一昨年までに24.3%から32.3%に増え、二人暮し16.7%から25.7%に増加し、この二つの総世帯数に占める割合が4割から6割に増えました。この傾向は今後の賃貸事業計画の重要な要素です。月収に占める家賃の割合は男性が20%~30%未満、女性が30%~40%未満で、男性より女性の方が住宅にお金をかけているようです。

次に、賃貸条件、設備、環境、利便性について見てみたいと思います。

図1のお部屋探しの際、重視した点は1位「家賃」、2位「間取り・部屋数」、3位「通勤・通学時間」となっています。その他、ここ数年「敷金・礼金などの一時金」が重視される傾向にあります。

図2は、20代・30代限定の設備に関するアンケートです。無くて不便な設備の1位は「バス・トイレ別」で、その内訳はシングルで2位、カップルで1位、ファミリーでも2位と需要はかなり高くなっています。2位は「収納(幅180cm)」で、どのタイプでも3位。3位は「追焚機能」で、シングルでは6位、カップルでは2位、ファミリーでは1位と、ファミリータイプでの需要が高まっています。4位の「エアコン」はシングルで1位、カップルで4位、ファミリーでは6位となっていて、こちらは逆にシングルタイプでかなり需要が高いと言えます。また、女性では「オートロック」や「2階以上」が男性よりポイントが高く、女性の防犯意識が高いことがうかがえます。

最後に図3は物件周辺環境の重視項目です。1位は「スーパー」、次いで「コンビニ」で、他を大きく引き離しています。これを男女別に見ると、女性は9割近くが「スーパー」を重視、一方、男性のトップは「コンビニ」。このように入居者ニーズと世帯状況を定期的に把握していくことで賃貸住宅の方向性が見えてきます。今後も情報をご提供させていただきたいと思います。

最近の賃貸事情-Vol.24 成約率を高める商品

既存建物の空室について、競争力を高めるためにハード面でできることは「室内をきちんとリフォームする」「付帯設備を充実させる」「共用部分をよりきれいにする」等。これから計画する場合は、前号でもお話したようにしっかりとしたコンセプトのもとにプランニングを行うことが大事です。

また、ソフト面での空室対策としては、「賃料、敷金、礼金など募集条件を緩和する」「ペット、性別、事務所相談など、入居者条件を緩和する」が考えられます。賃料を下げるか、一時金(敷金礼金)を下げるかは迷うところです。賃料を下げる方法が一番効果的ですが、契約中の他部屋の賃料にも影響を及ぼすため全体的に収支が悪化し、修正するには長い年月を要します。

最近、金融業界から賃貸業界へさまざまな商品が持ち込まれています。貸主側にメリットのある商品と借主側にメリットのある商品、また双方共にメリットのあるものもあります。借主向けの商品として、まずは「集金代行」、これは借主の銀行口座から賃料相当額を引落し、貸主の口座へ送金するというもので、従来の自動引落より料金が安いというメリットがあります。次に「クレジットカード支払」、これはクレジットで物を買ったときと同じように借主のカードにポイントが貯まるというメリットがありますが、借主に代わり保証会社が賃料を支払うため、滞納がなく貸主側にとってもメリットがあります。

「保証人代行」、これは以前もご説明いたしましたが、契約時に借主が保証会社に一定の金額を払い連帯保証人を依頼するシステムで、貸主借主双方のための商品と言えます。さらに「契約金立替サービス」というものも登場しています。これは専門会社が敷金、礼金、更新料などを借主に代わり貸主に立替払いし、借主は毎月の賃料にプラスして立替金を分割で支払うというものです。借主は「賃料100,000万円、敷金2ヶ月、礼金2ヶ月」(一時金は多くても毎月の支払いが少ない)、または「賃料114,000円、敷金0礼金0」(毎月の支払いは多くても一時金が少ない)のいずれか好きな方を選べます。後者はデパートで分割にて物を買う、あるいはローンでクルマを購入することと同様の考え方でしょう。引越の際は、契約金以外に引越代、家具の購入などお金が掛かります。貯蓄のある方は両方の支払いが可能でも、片方の貯蓄しかない人、両方支払えるが蓄えを残しておきたい人は後者を選べます。これは比較的家賃帯が低く、若い世代に対するサービスと思われますが、いずれにしても選択できるということはターゲットが広がるのは確かなことです。貸主側には「契約金がない人は将来的に不安」という懸念もあると思われますが、そこは申込者の審査をしっかり行えば問題ないでしょう。

「損害保険」や「滞納保証」など、貸主側に対する商品が先行する中、保証人制度や家賃・契約金の支払方法など、借主に対する商品も増えているということが言えます。

最近の賃貸事情-Vol.23 コンセプトマンション

今回は共同住宅に関する最近の傾向についてお話したいと思います。
地域にマッチしたプランニングが重要ということは随分前から言われていましたが、貸手市場の時代は部屋を造るだけで比較的簡単に入居者が集まりました。しかし入居者ニーズが多種多様になり、供給が増え競争が激しくなるにつれて、それが通用しなくなり、ターゲットを絞った計画の必要性が重要視されています。

これからの賃貸マンションの入居者は、部屋に合わせて住むのではなく、自分の仕事や趣味、ライフスタイルに合わせて部屋を選ぶ時代になるでしょう。また、賃貸派が増えているという現実は、自己所有の戸建てにしか付いていない設備や仕様を賃貸マンションにも求めるようになり、別の視点から見た場合、「癒し」を期待する方も多くなるやもしれません。

現在、デザイナーズマンションやホテル並みのサービスを設けている大型マンション、プールやスポーツジムが入ったマンションが数多くあります。また、対照的にウィークリーマンションやマンスリーマンション、最近ではゲストハウス(賃貸アパートとホテルのそれぞれ良いところを組み合わせた新しいタイプの宿泊施設)という下宿スタイルマンションも登場しています。他にはドミトリー、ルームシェア(フラットシェア、ハウスシェアなどとも言う)などもありますが、これらは滞在期間など、その人の状況に合わせて借りられるメリットがあり、生活費を抑えて自分のやりたいことに全力投球する人に向いています。ラウンジで団欒、パティオでバーベキューなど、敬遠されがちだった入居者同士のコミュニケーションが復活する時が訪れるかもしれません。

従来の賃貸マンションは個人のオーナーが経営していることが多いため、分譲マンションに比べ小規模でした。ところが最近、不動産ファンドの影響もあり法人オーナーが増え、都心部周辺では数百戸もあるような分譲マンション並みの賃貸マンションも増えています。比較的世帯数の少ない低層マンションに住むのか、或いは大規模な高層マンションに住むのかは意見が分かれるところです。それぞれのメリットとデメリットが相反するため、最終的には住む人が「何を重要視するか」で決めるということになります。数年後にはどちらに軍配が上がるでしょうか。

このように価値観と生活スタイルが多様化している今日、建物の大小を問わず、これからの共同住宅(賃貸マンション)のプランニングにおいて重要なことは、単にユーザーのニーズを反映させるだけでなく、貸主側がユーザーをリードしていくような考え方が必要になるかと思われます。

最近の賃貸事情-Vol.22 賃貸サイト(インターネット)

インターネットの賃貸サイトについてお話します。不動産業界のアンケートによると、パソコンの普及に伴い、お部屋を探している人の約8割はインターネットを活用しているとのことです。最終的には現地を確認し、部屋を見てから決めるでしょうが「間取」や「外観写真」が出ているので、イメージがつかみやすいのでしょう。

数多くあるサイトの中で、どこに掲載するか。当社では、ヤフーの検索で上位に位置する「ISIZE(フォレント)」と「アットホーム」に掲載しています。サイトを選ぶ基準は「キーワード(賃貸・不動産・部屋探し)で検索した時に上位にくる」「他のサイトとのリンク」「情報管理体制がしっかりしている」「携帯電話サイトの充実」などの点が挙げられます。検索の結果、上位に位置すれば大勢の人の目に入ります。また、それぞれ他のサイトと連動しているものも多く、たとえばISIZEに掲載することによってヤフー不動産やアパートマンションガイドにも同時に掲載される仕組みになっています。また、単に掲載本数の多いサイトがベターではなく、同じ物件が複数の会社で紹介されていることや成約済の物件が掲載されているなど、信用性に乏しい場合もあります。

インターネットの普及により閉鎖的だった不動産情報が開放された感があります。紙媒体の場合、市場に出るまで最低一週間を要しましたがインターネットは時間差なく市場に出ます。また、従来は直接不動産会社に足を運び、勧められる物件の情報しか得られなかったユーザーが、好みに合った物件を自分で検索でき「他と比較」し、「家賃相場」も分かり、たくさんの情報を得ることができます。そのためユーザーの知識も豊富になり、人気の高い物件はより競争が激しく、人気のない物件はなかなか決まらないという、二極化傾向がより一層高まっています。
そのような中、最近「家賃オークションシステム」が登場しました。仕組みは一般のオークションと同じ。住みたい方が家賃を提示し、最終的に1番高い家賃を提示した方に住んでもらうというもの。資本主義の原則に即しているとは思われますが、人気がある物件は高額になりますが、その反対もあります。

高い賃料で貸せるということはオーナーの期待するところですが、どんな人が住むかも、きちんと家賃を支払うこと同様重要です。お金はあるがトラブルを引き起こす人、共同住宅の規約やマナーを守れない人はNGです。一度の取引で完結する売買契約とは異なる点です。「オークションに参加できるのは入居者審査後」など、なんらかの制約を設けないと、オークションが賃貸業界に定着するのは難しいのではないでしょうか。

これからも各サイトからの反響数や特徴を分析して、上手にインターネットを活用して、効率よく広告宣伝をして行きたいと思います。

最近の賃貸事情-Vol.21 新しい管理サービスVOD(ビデオオンデマンド)

最近の賃貸マンションでは、オートロック、宅配ボックス、光ファイバーなどはあたりまえの共用設備になりつつあります。これらは入居者募集の際のセールスポイントであり、入居者が便利に快適に生活できるための付帯設備です。また、これらの設備を備えることにより競争力が高まり、入居率が高くなるということはオーナーのための付帯設備とも言えます。エアコンや浴室換気乾燥機、床暖房などの専用設備にも同じことが言えます。

入居者も単に便利さだけを求めるのではなく、環境や安全性、健康面を考えて住宅を選ぶようになってきました。これまで入居者の間で安全性への関心が高く、特に女性の要望が強くあるセキュリティシステムはコスト面がネックであまり導入されていませんでしたが、低コスト化により導入する賃貸マンションも増えてきました。

競争が激しい賃貸業界、オーナーや管理会社、設計事務所や建築会社が入居者確保のため付帯設備や仕様、またペット飼育可能、楽器可能マンションなど、工夫をこらした建物を懸命に考えています。

最近、すこし変わったサービスが登場しました。それがVOD。やはりこれまで高額な使用料など、コストの高さが問題だったが低コスト化されつつあります。

VODとはインターネット上で映画を好きな時に視聴できる人気の高いサービスで、いままではパソコンがなければ利用できなかったものが、機材を設置しインターネット回線を接続すれば手持ちのテレビでも利用できるようになります。また、視聴料の一部がオーナーや管理会社に還元され、入居者、オーナー、管理会社の3者にメリットがある付帯設備と言えます。管理会社から入居者への連絡事項を画面で行うことができるため遠隔地からも業務連絡が行え、結果的に管理業務の効率化が図れます。通常入居者へ知らせたいことは掲示板にて告知し、重要なものは投函する必要があります。メールボックスにはチラシや郵便物が溜まっており、入居者は名前入りの重要なもの以外、すべてゴミ箱へポンと捨ててしまいます。管理会社からの通知も一緒に捨てられてしまうこともあり、「設備点検」「断水」「工事」などの通知書、「ゴミの出し方」のお願い書、「騒音」に関する注意書を見ない人が多いようです。しかし、VODを利用すれば掲示、投函をする必要がなく伝達も確実。入居者は設備点検や共用部分の工事など管理会社からの連絡が、掲示板を見ることなしにいつでも自宅のテレビで確認できます。

その他、引越の予定がある入居者には空室紹介、購入を考えている入居者には売買物件の案内もできるため、入居者の囲い込みに効果的で営業面でも役に立ちます。また、いろいろなサイト上で各種注文や物品購入ができ、ネット上でのカード決済も可能です。その他、さまざまな地域の情報を提供して入居者の生活全般をサポートすることができます。オーナーや管理会社にとってメリットがあるVOD、結果的に入居者にとってよりよいサービスと言えます。